【正月追記】今年最高の本「普天を我が手に」
私の勤めている図書館では、図書館が発行する図書館便りのほかに、市の広報に載せるオススメ本も担当しています。私は今、広報担当なので、それの取りまとめをしています。一年分の原稿を新年あけにみんなから集めるので、タイムリーにならないのが難点ね。(「べらぼう」が始まった時、恋川春町が鱗形屋のために書いた黄表紙が収録されている本を、急遽、ナマで入れたことがありますが…)…ということで、今年の私の最高の本は奥田英朗「普天を我が手に」です。1~3巻で、この年末年始は、12月に出たばっかりの3巻を読んでいます。すでに真ん中ぐらいまできてしまった。これについては過去にも書いてました。『日本人なら読んでほしい奥田英朗「普天を我が手に」』私の大好きな作家・奥田英朗さんの手によるこの本、第一部を読了しましたが、すんばらしい出来です…「昭和史を総括」奥田英朗さんが3部作の大河小説を刊行【読売新聞…ameblo.jp『「普天を我が手に」第二部、若者4人の戦争と敗戦』奥田英朗「普天を我が手に」第二部、近所の図書館に、一部読了後に早々とリクエストしておいたため、けっこう速い順で予約が回ってきて、読んでいます。一部は、4種…ameblo.jpここからちょっと脱線します。4人が結婚するんだけど、つくづくと、結婚というものは、人生にとって「しようと思ってする」ってもんじゃないんだなと感じますね。特に男は、日々、自分の仕事、使命に必死になって生きていれば、周りが勝手に、結婚相手をおぜん立てしてくれるってのがよくわかりました…(まあ時代もあるけれど)それには、第一部で書かれた親の考え(生きる姿勢)もあるので、そういう親からは、こういう子が生まれる。親とは自分の背中を子供に見せて生きるものということがよくわかります(責任重大です)。女の場合は、この登場人物は当時では珍しいワーキングウーマンですが、やはり、誰かが見合った相手を見つけてくれるんだなと。「結婚はつり合い」「夫婦はバランス」というようなことが書いてあり、なるほど、恋愛ってのは「自分が決める」で超主観的。だけど紹介・見合いってのは「他人が決める」で、客観的。そう考えると、今の時代のマッチングアプリは、条件から入るので…AIが決めてくれる(きっかけを)のだろうか?う~ん難しい問題…マッチングアプリって、長男は「これは上級者じゃないと無理だよ~」って言っていました。昭和を考える上で、とても面白い、一番いい本です。でも…なんだか主要登場人物の2人が…争いになるような予感がして、怖い!読み進めたくない!二人とも傑物です。こんな若者が敗戦後の日本を引っ張っていったんだって、思います。二人とも最高の結末になってほしい!!奥田さん頼む!!私は、これを、来年度の市の広報紙に書く本にしようと思います。60字程度でまとめないとならない。予約があんまり入ってないのが不満です。こんなにおもしろいのに。もううちの館では、第二部も予約はけています。私は、勤務館の新刊は予約しないので、近所の図書館に、3か月も前から予約していました。そんで、私は資料番号ごとの書誌情報を毎週水曜にダウンロードするの担当でもあるんですけども、先週の水曜、ついに、第三部をダウンロードしたので、いよいよ来るな!と思っていました。近所の図書館も同じところから書誌情報を買っているので、同じタイミングです。金曜日に本が来て、土曜日に連絡きました~。でも予約がたった一桁です。なんで??みんな読んでよ!もっと!!今、「丁寧な暮らしをする餓鬼」って本も併読しています。コミックですが、これもまたお勧めですね~~。【追記】では、1月2日夜読み終わったので、恒例の抜き書です。白人の中学生に日本について話す「これは世界地図です。何か疑問点はありますか」ノラが問うと、女子生徒が挙手し、「大西洋がありません」と言った。「あるわよ。右と左に分かれてるだけ」「それとアメリカ大陸が東の位置にあります」「そうね。イギリスは西の端だし。でも、わたしたち日本人が使ってる世界地図はこれなの。あなたたちは日本を極東の島国と呼んでいるけど、日本人からすると、なぜ日本が極東なんだって話になる。この地図は間違っていると思う人は手を挙げて」ノラが問いかけると、生徒たちは戸惑いながらも静まり返り、誰も挙手しなかった。「もしみなさんが、日本が中心にある世界地図を奇妙に感じるのだとしたら、日本人の同じように、ヨーロッパが中心にある世界地図を奇妙に感じていることを想像してみてください。すなわち物事は、立場によって見方が異なるということです。アメリカ大陸を発見したコロンブスは、スペインでは英雄かもしれませんが、元々住んでいた人たちからすると、侵略者でしかありません。自分たちだけが正しいと思わない。ちがう考え方の人たちが世界にはいる。それを想像することが学問のスタート地点です」ノラのスピーチには、教師たちも感心した顔で聞き入っていた。壇のそでにいるリンダは尊敬の眼差しを向けている。一度生徒たちの心を摑むと、後は簡単だった。日本には2600年の歴史があり、その間、他の国の植民地になったことは一度もない。天皇家は万世一系で、これは世界に類を見ない。国土は狭いが人口は1億人近くいて、ほぼ同一民族が暮らしているー。ノラの解説のひとつひとつにどよめきが起こり、生徒たちの目が輝いた。白人の中学生にとっては、初めてのカルチャー・ショックなのだろう。質疑も活発になされ、ノラの授業は大成功と言えた。リンダは興奮した顔で、「日本人を見直した」と褒めてくれた。朝鮮戦争戦時下の立川基地に慰問演奏早速、人気曲「チュニジアの夜」でスタートする。すると、それまで後方にいた黒人兵たちがステージ前に押し寄せて来た。めいめいが体を揺らして踊るのだが、リズム感がいいから実に様になっている。するとそれを見た白人兵たちが女子をエスコートし、踊りに加わった。満はジョーに目でテンポを上げるよう合図した。こうなると会場はダンスホールである。二曲目はペニー・グッドマンで有名な「サヴォイでストンプ」。これは満がヴォーカルをとった。タップも披露し、やんやの歓声を受ける。このとき、一人の黒人兵が金属の皿とスプーンを手にステージに上がろうとした。相撲部員が阻止するが、するりとかわし、満の隣まで来た。「ヘイ!カモーン!」調子よく声を発し、皿をスプーンで叩き、カウベルのように鳴らす。するとほかの黒人兵たちも、バケツやカップを打楽器代わりにして演奏に加わった。会場は大盛り上がりで、まるでカーニバルだった。笑顔が弾け、歓声が飛び交う。アメリカ兵にとって今が戦時下だとは到底思えない。様子を見に来た将校たちも愉快そうに体を揺らしていた。盛況のうちにステージを終え、後片づけをしていると、兵士たちが次々と握手を求めて来た。「楽しかったよ。ありがとう」「日本人もジャズをやるんだな。見直したよ」みな好意的で、チップを渡そうとする者までいる。一人、黒人兵がやってきて、「トランペットを吹かせてくれ」と言うので、満は自分の楽器を貸してやった。黒人兵はそれを手にすると、哀感漂うメロディを美しく奏でた。「いい曲だね。なんて曲?」「『ウィ・シャル・オーヴァーカム』黒人兵が答える。「我らは打ち勝つ」か。なるほど。これは軍隊曲?」「はは。馬鹿を言うな。これはゴスペル・ソングと言って、黒人教会で歌うおれたちの曲だ」黒人兵が、トランペットを愛おしそうにさすりながら、話を続けた。「日本人が黒人の歴史にどれだけ知識があるか知らないが、おれたちの祖先は奴隷としてアフリカから連れてこられた。そして長らく虐げられた。奴隷制こそなくなったが差別は今も変わらない。南部へ行けばおれたちは白人経営のホテルに泊まれないし、レストランにも入れない。軍隊でもそうだ。黒人部隊は真っ先に前線に送られる。危険な任務はいつも黒人兵だ。おれたちが盾になり、白人兵は後から来る。死ぬのは黒人だ」満は昔、父から聞いた話を思い出した。日本軍が真珠湾を攻撃したとき、アメリカの黒人たちはひそかに快哉を叫んでいたと。彼の国の人種差別は、根が深そうだ。(略)「幸運を祈ってる。そのトランペットは君にあげるよ」「くれるのか」「ああ、プレゼントしたい気分なんだ」「そうか、ありがとうよ」黒人兵はトランペットにキスをし、ゆっくりと去っていった。彼はこの後、戦地に送られる。生きて帰れるかどうかは、誰にもわからない。硫黄島で遺骨収集やっとのことで司令部壕に着き、5人ほどで中に入った。想像を絶する狭さで、全員が入ることなどできないのだ。持参した線香を立て、黙祷する。そのとき、四郎の中で何かがぐにゃりと捻じれ、平衡感覚を失った。自分の意思とは関係なく、頭がゆらゆらと揺れる。続いて壕のあちこちから幾人もの男の視線を感じ、鳥肌が立った。「団長、どうかしたの?」異常を察したヘンリーが小声で聞く。「いや、なんでもない」四郎はそう答えたが、背中にはびっしょり汗をかいていた。霊とか心霊現象とかを信じたことはないが、ここには間違いなく死んでいった兵士の霊魂がさまよっている。その日のうちから遺骨収集の作業に入った。米兵が二名、監視役でついたが、黙々と探索する団員を遠巻きに眺めるだけで、口を利くことはなかった。そもそも地下壕には入りもしない。外の気候は温暖だが、地下壕は湿気が溜まり、作業をしているとたちまち玉の汗が噴き出た。兵士は人力でこの穴を掘ったわけで、その苦労を思うといたたまれなくなる。四郎は、遺族には無理をしないよう勧告した。肉体労働は有志の若手団員で受け持てばいい。遺骨収集が済んでいない地下壕は、どこもかしこも人骨だらけだった。ヘルメットや軍服がまだ形を残していて、折り重なって死んでいった様子が想像できた。遺族はショックで口も利けない。一人の老人が嗚咽し、その声が洞窟にこだました。この作業が二週間も続くのかと思うと、正直気が重かったが、だからこそ自分がやるべきなのだと、四郎は決意を新たにした。死んでいった兵士を成仏させるのは、生き残った者の使命である。(略)その夜、なかなか寝付けず、毛布にくるまっていると、外で「ザッザッザッ」という兵隊が行進する軍靴の音が聞こえた。夢かと思うが、自分は確かに起きている。幻聴か、幽霊か。昼間、地下壕で霊魂を感じたこともあり、とくに恐怖はなかった。なんとしても彼らを救ってあげたいー。四郎が思ったのはそれだけである。これからの政治家とは渡部が沈んだ声で言う。「何だか、ひとつの時代が終わった気がするな」志郎は率直な思いを伝えた。「おれもだ。可愛がっていた錦川が去年死んで、今度は先生自身だ。こんな言い方は不謹慎だと思うが、神様が決めたことかもしれないな。これからは新しい時代だ。あんたたちは退場してくれってな」渡部の言葉に志郎は深く感じいった。確かに太田は古いタイプの政治家だった。この先、国際社会で日本が生き抜いていくためには、腹芸と義理尋常は無縁となる。これからの政治家に必要なのは、交渉術と、取捨選択する冷徹さだ。「おれは、父親を失った気分だ」渡部がため息交じりに言う。言われてみれば太田は親の世代だ。彼は、渡部や矢野、そして自分のことも、息子のように気にかけてくれていたのかもしれない。時代はどんどん変わっている。日本人とは「君たちの夢は、おれの夢でもある。昭和の初め、大連のダンスホールで欧米から北楽団を観て、自分もいつか世界を股にかけるエンターテイナーになりたいと思った。だが残念ながらおれにそこまでの才能はなかった。だから若い人に賭けたい。それら君らだ」満が答えるとテリーは泣き出してしまい、満は改めて彼らを愛おしく思った。世界を夢見るのは、日本人の宿痾のようなものだ。黒船来航以来ずっと、自分たちは大海でも通用するだろうかと井戸の中で論じ合ってきた。神器のように舶来品をありがたがり、無条件に本場を崇拝する。たぶん半分は日本人の思い込みと錯覚だろう。さらに戦争でコテンパンにやられ、自信を喪失した。このトラウマと西洋へのコンプレックスは、次の次の世代くらいにならないと消えないのかもしれない。昭和に生きる日本人は、克服することがたくさんあるのである。