『Coda コーダ あいのうた』(シャーン・ヘイダー監督) | 新・法水堂

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年間300本以上の演劇作品を観る観劇人です。ネタバレご容赦。

『Coda コーダ あいのうた』

CODA

 

 
2021年アメリカ・フランス・カナダ映画 111分
脚本・監督:シャーン・ヘイダー
原作:フランス映画『エール!』
撮影:パウラ・ウイドブロ 美術:ダイアン・リーダーマン
編集:ゲラード・ブリソン 衣裳:ブレンダ・アブバンダンドロ
音楽:マリウス・デ・フリース 音楽監修:アレクサンドラ・パットサヴァス 
音楽プロデューサー:ニック・バクスター
字幕翻訳:古田由紀子 

 

出演:

エミリア・ジョーンズ(ルビー・ロッシ)

トロイ・コッツァー(父フランク・ロッシ)

マーリー・マトリン(母ジャッキー・ロッシ)

ダニエル・デュラント(兄レオ・ロッシ)

フェルディア・ウォルシュ=ピーロ(マイルズ・パターソン)

エウヘニオ・デルベス(ベルナルド・ヴィラロボス先生)

エイミー・フォーサイス(ルビーの友人ガーティー)

ジョン・フィオレ(加工業者トニー・サルガド)、ロニー・ファーマー(氷製造業者アーサー)、ケヴィン・チャップマン(漁師ブレイディ)、コートランド・ジョーンズ(サイモン先生)、モリー・ベス・トーマス(クラスメイト・オードラ)、ストーン・マーティン(“ハリー・ポッター”)、ジョゼ・ゴンザルヴェス(漁師モンド)、オーウェン・バーク(漁師ジミー)、ランス・ノリス(漁師チャブズ)、ジャレッド・ヴォス(アメリカ海洋大気庁代表ジョン・カウフマン)、マリリン・ブッシュ(漁師の妻ニーナ)、メリッサ・マクミーキン(同バーブ)、エリカ・マクダーモット(同アンジェラ)、ギャレット・マケクニー(TVレポーター)、レベッカ・ギベル(監視員ジョアンヌ・バイルズ)、TJ・キアラメタロ(沿岸警備隊乗船官吏)、ゲイリー・ギャローン(沿岸警備隊員)、サラ・クラーク(ベルナルドの妻ターニャ)、エミリア・ファウチャー(娘ミーシャ)、レナ・マリシェフスキ(審査員)、デイヴィッド・ニューマン(審査員)

 

STORY

豊かな自然に恵まれた海の町で暮らす高校生のルビーは、両親と兄の4人家族の中で一人だけ耳が聞こえる。陽気で優しい家族のために、ルビーは幼い頃から“通訳”となり、家業の漁業も毎日欠かさず手伝っていた。新学期、秘かに憧れるクラスメイトのマイルズと同じ合唱クラブを選択するルビー。すると、顧問のV先生ことヴィラロボス先生がルビーの歌の才能に気づき、ボストンの名門バークリー音楽大学の受験を強く勧める。だが、ルビーの歌声が聞こえない両親は娘の才能を信じられず、家業の方が大事だと大反対。悩んだルビーは夢よりも家族の助けを続けることを選ぶと決めるが、思いがけない方法で娘の才能に気づいた父は、意外な決意をし…。【公式サイトより】


フランス映画『エール!』の英語リメイク版。

ちなみに監督名は日本ではシアン・ヘダーとなっているが、発音記号からすると「シャーン・ヘイダー」。

 

タイトルのCODA(コーダ)はChildren of Deaf Adultsの略で、聴覚障害を持つ親のもとで育った子供のこと。この言葉自体は自身もCODAであるイギル・ボラさんの『きらめく拍手の音』という本で知ったが、私の身内にもCODAがいるので身近な存在ではあった。

本作のヒロイン・ルビーは多くのCODA同様、子供の頃から親の通訳をするのが当たり前になっていて、漁師をしている父親と兄の仕事も彼女なしには回っていかない。オリジナル版ではチーズなどを作る酪農家だったのを漁師にしたのはうまい変更点。

元々歌うことが好きだったルビーがその才能を認められ、音楽大学進学を考えるが、彼女に家を出て行かれては困る家族は反対する。夢と家族の板挟みとなり、一旦は夢を諦めるルビー。

 

そんなルビーが出演する秋のコンサート。家族も会場に駆けつけるが、当然ながらルビーの歌声は届かず、両親は手話で夕食の話なんかをしたりしている。ルビーとマイルズとのデュエットでは、途中で音声がオフとなる。父フランクは周りの客の反応を見て、初めて娘の才能に気づかされるのだが、その辺りが何とも切ない。その夜、家の外でフランクがルビーに自分のために歌って欲しいと頼み、娘に触れてその振動で歌を感じ取るのもいいシーン。

 

やはり音楽大学に挑戦することにしたルビーは、オーディション会場でジョニ・ミッチェルさんの「青春の光と影」(Both Sides, Now)を披露する。この曲がまた本作のテーマともぴたりと重なってとてもいい。客席に忍び込んだ家族のために手話を交え、気持を込めて歌うことが出来たのは、この家族のもとで生まれ育ったからだろう。

失ったものもあれば、得たものもある。ジョニ・ミッチェルさん、沁みるわぁ。

 

主演のエミリア・ジョーンズさんはまさに新星現るという感じ。

本作はアカデミー主演女優賞を受賞したマーリー・マトリンさんがまずキャスティングされ、彼女の意向で父親と兄も実際に聴覚障害を持つ役者が選ばれたとのこと。セックス大好きな父フランクを演じたトロイ・コッツァーさんはゴールデン・グローブ助演男優賞にノミネートされているが、アカデミー賞でもノミネートされそうだな。