玉田企画
『夏の砂の上』
2022年1月13日(木)〜23日(日)
BUoY
作:松田正隆 演出:玉田真也
舞台監督:鳥養友美、金能弘 舞台美術:濱崎賢二
照明:山内祐太、江花明里 音響:池田野歩、大堀巴瑠花
衣装:7A 方言協力:前原瑞樹(青年団)、青山祥子(贅沢貧乏)
宣伝美術:牧寿次郎 漫画:大山海
撮影監督:倉本光佑 Bカメラ撮影:高嶋正人 映像編集:冨永圭祐
制作:河野遥(ヌトミック)、小西朝子
出演:
奥田洋平[青年団](小浦治)
坂倉奈津子[青年団](小浦恵子)
浅野千鶴[味わい堂々](治の妹・川上阿佐子)
祷キララ(阿佐子の娘・川上優子)
用松亮(治の友人、タクシー運転手・持田)
山科圭太(治の友人・陣野)
岡部ひろき(優子のバイトの先輩・立山)
西山真来[青年団](陣野の妻・茂子)
STORY
長崎県の坂の上にある小浦家。会社がつぶれて無職となり、妻・恵子とは別居中の治のもとを東京に住む妹・阿佐子が娘の優子を連れて訪れる。福岡でスナックを開くことになったという阿佐子は落ち着くまで優子を預かって欲しいと言って去っていく。中学を卒業して高校に進学はしなかった優子はコンビニでアルバイトを始め、バイト先の先輩・立山と親しくなる。ある夜、治の友人・持田の再就職を祝って飲んできた治が持田と陣野とともに帰ってくる。治は妻の家に冷蔵庫を運んだという陣野から話を聞き出そうとするが、陣野ははぐらかそうとする。数日後、持田が交通事故死したという報せが入り、治が喪服に着替えていると、陣野の妻・茂子が突然やってくる。茂子は夫と恵子の関係を知っているのかと治に詰め寄る。
玉田真也さんが1998年に青年団プロデュース公演で初演された松田正隆さんの読売文学賞受賞作を演出(初演の演出は平田オリザさん)。玉田企画で自作以外の戯曲を演出するのは初めてで、最初に読んだとき以来、自分が戯曲を書く際の基準となる作品になっているのだとか。
舞台は手前に八畳一間の和室。卓袱台、箪笥、座布団、積み重ねられた本、扇風機などが置かれ、天井からは笠のついた電球。廊下を挟んで向かい側にもう一部屋。廊下の下手側は台所へと続き、上手側には玄関、トイレ、電話がある。
毎回楽しみにしている玉田企画。今回は松田さんの戯曲ということで、当然ながらいつもとは雰囲気が違っていたが、玉田さんが演出家としても優秀であることをこの一作で証明してみせた。俳優・玉田真也のファンでもある私としては出演していないのが残念ではあるけど、それだけ思い入れのある戯曲だから、演出に専念したいという思いが強かったのだろうな。
本作はひょんなことから同居生活を送ることになった伯父と姪の関係にある2人が物語の中心となる。暑い夏、ずっと雨が降らず、断水なのか水も出なくなり、喉が渇く。この渇望感は仕事も妻も失った(子供も4歳の時に事故死している)治と母親の都合で振り回される優子の2人に共通するもので、最後の雨を飲むシーンへと繋がっていく。若干、恋愛関係めいた雰囲気も醸し出していたが、それよりはもっと心の奥底で通じるものが2人の間にはあったような気がした。
そんな伯父・姪を演じた奥田洋平さん、祷キララさんは理想的なキャスティング。
祷さんは『みみばしる』、ヨーロッパ企画『ギョエー!旧校舎の77不思議』に続いて3回目の舞台となるが、環境のせいもあってか大人びている16歳の少女の雰囲気にぴったり。その愁いを帯びた眼差しが印象的。
玉田企画の常連・浅野千鶴さんは冒頭と最後のみ、用松亮さんは1場のみの出演だったが、それぞれインパクトのあるキャラクターでいつもながらに楽しませてくれた。
上演時間2時間4分。
