その一瞬(とき)取り戻せるなら

 すべてを捧げよう


 

 一閃がつま先から
 脳天までを貫き
 天に戻っていったとき
 ばらばらの小石のだった
 わたしは
 まるごとにされて
 世界に
 抱かれた


寄せ集めの小石として

ざわりぞわりと

生息のみを目標としていた

わたしを

幾千幾万の

光の束は

一瞬にして

溶かしてかたまりとし

まるごとにし


あなたは

太古から脈々とつづく

いのちの流れのひとつである、

と組み伏せた



一瞬にして消えてしまった
 光が
 置いていった鍵には
 刻まれていた


生は死であり

死は生であり

肉は仮であり

いのちのまことだけが

人を救うのだ、と


この一瞬(とき)残した

永遠の(じつ)であるとおもえた鍵を

にぎったまんま


これならまるごとずっと歩ける、と

まるごと歩みを進めていける、と




ある時
 突然に
 鍵は失われた


確かに手にあった、という


ひんやりとした事実だけを
 かすかに残して


失くした鍵は以来

戻らず

小石の寄せ集めに戻った

わたしは

その鍵が手に戻るのが早いのか

仮の肉が終わって

いのちの源に心地よく

吸われるのが先なのか

わからずのまま




それでもまた

仮の肉の中で

その一瞬(とき)

待ち続けている