中国企業の投資家向け情報開示が、とんでもないことになっている・・・・以下は先週発見した事例から。

仕事でたまに中国企業の年次報告書や決算書をみる機会がある(中国語と英語の併文表記)。英国統治時代から、香港の株式市場では、1997年の返還を前にして、中国本土の企業(主に政府系)はH株という名前で香港で上場し、投資家が普通に売買できるようになっていた。もちろん、国際的な市場であり、参加してる投資家への情報開示は、国際的にみてスタンダードな基準で行われていた。特にH株第一号なんて、慎重に丁寧に有価証券報告書が作られていた。しかし!ついこないだ、その決算書がとんでもなく変貌していた。

まず、会計基準が国際会計基準からいつのまにか中国式会計基準に変わっていた。二番目に、営業費用の項目になぜか金融費用が計上されていた。通常、金融費用や金融収入は営業外収益となる。この時点で、会社側が営業利益ですーと述べている項目は営業利益ではないことが判明。私は、その会社をみたのがすごく久しぶりだったので(私が担当者だったのは10年前)、今の担当者にきいてみた。「なんか情報開示が悪くなってません?」担当者「そうなんですよ、いつのまにかこんなになっちゃって」・・・・どうしよう?と相談した結果、営業利益は使わないで税前利益を、企業紹介に使った。しかし、営業利益がないと、本業のもうけがわからないんだが。。。。

別の企業で、売上高が突然、十分の一に減ってしまった例もあった。過去数年にさかのぼって売上高が一割くらいの小ささに・・・一体何が??純利益は変わっていなかった。理由は、本来、売上計上してはいけないものを売上として計上していた。持ち分法といって、連結対象ではない小数の投資先の業績は、利益のみ計上することになっている。本来の出資者が、売上を自分の所のものとして表記するから、ダブらないようにするためだ。世界基準である。それを、中国ルールは別、とダブらせていたのである・・・・・売上高の推移は重要な投資判断資料。それがこんなに簡単に無視された事が驚きであった。まあ、この例は改善?なんだけど、逆に改悪されるケースもあるので、大変。

普通、香港に上場されている中国企業は、年次報告書と半期報告書は国際会計基準、第一四半期と第三四半期は中国会計基準で売上高だけなど一部のみ開示、というパターンが多い。なかには四半期毎にきっちり、国際会計基準で、売上高も各種利益も、セグメント情報も開示するところもあるが、少数派。

中国は規模が大きいので、その世界だけで成立してしまうため、世界ルールを無視して中国ルールという、中国でしか通用しない基準をよく持ち出します。明記されてないので、あやしい?と思いつつ、会社発表を鵜呑みにしていると、あとで振り回されるはめに。そして、日本人でも中国関係に長年携わっていると、中国ルールに慣れちゃって、中国ルールだからいいんだ、文句あるか!とルール違反もお構いなしになってしまうケースがある。他に、中国独特の不思議な表現を使ったりもする。理性的な不動産価格、は代表例。意味はバブルじゃないよ、適性水準の価格だよ、というもの。書いてる人が理性的になってほしい。

NY上場の中国企業の情報開示も問題視されるこの頃。リステート、つまり修正ばっかりするので、本当の企業の姿が見えてこないから。中国企業の取扱いには、本当神経使います。