Defend Trade Secret Act(営業秘密保護法)の成立間近? | 日々、リーガルプラクティス。

日々、リーガルプラクティス。

企業法務、英文契約、アメリカ法の勉強を
中心として徒然なるままに綴る企業法務ブログです。
週末を中心に、不定期に更新。
現在、上場企業で法務を担当、
米国ロースクール(LL.M.)卒業し
CAL Bar Exam合格を目指しています。

最近、ちょっと気になった法務関連ニュースとかできちんと調べてブログにアップするまでは至らないものの、一応備忘録として残しておきたいことをいくつかダイジェスト的に何回かに分けて記載しておこうと思います。なのであまり中身は濃くありません。あしからず。。。

まずは表題の件。

米国では、営業秘密の扱いについては、各州の営業秘密法制によってまず定められていますが、これはほとんどの週で、UCCと同じく、実際は法律ではないモデル法典である統一営業秘密法(Uniform Trade Secret Act/UTSA)を採用しているのが現状です。また連邦法としては、経済スパイ法(Economic Espionage Act/EEA)が連邦刑法として存在していますが、あくまで刑法としての性質であるので、民事訴訟の手続として営業秘密の不正に対して連邦裁判所に訴訟提起することは、州籍相違管轄(Diversity Jurisdiction/DTSA)に基づいてUTSA違反として提訴するか秘密保持契約等の契約違反で提訴しない限りは認められていません。

またそれ以外にも財産の差し止めに関するルールや競業避止義務違反に対する対応、通報者に対する保護などに関する手当が不足している、といった問題点があったようで、現在、米国では連邦法である営業秘密保護法(Defend Trade Secret Act)が上院と下院で審議されている模様です。

これが成立するとどのような変化があるんだろう?という感じがしますが、知財系ブログで有名なPatenly-Oのエントリとか、Jones DayのホワイトペーパーなどにDTSAに関する記事がありますので、ご参考までに。


個人的な所感としては、DTSAはEEAを改正する法律にあたるようなので、訴訟における立証責任の軽減化が大きな影響があるのではないか、と思っています。つまり、EEAは刑法なので、有罪にするためには、罪を犯したことの立証レベルが"beyond reasonable doubt"という非常にハイレベルでなければいけないのに対し、DTSAによって民事訴訟での訴追も可能になれば、そちらでの立証責任は、preponderance evidence(違反行為をした可能性のほうがしていない可能性よりも高い)というレベルにとどまります。よってこれまでEEAでは無罪放免だった人が、DTSAの元で、高額の賠償責任を負う可能性が生じそうです。しかも悪質な違反者は、これまでUTSAでは2倍の懲罰的損害賠償が定められていたのが、DTSAでは3倍賠償(Treble Damages)となる模様。

あとは、EEAとUTSAのハーモナイゼーションを図ることになるようですが、これが米国法が準拠法となるNDAなんかにどう影響があり得るのか、ちょっと気になっています。全く影響がないかもしれませんが、なんせカリフォルニア州なんかでは、UTSAの規定ぶりからして、NDAで秘密情報の定義を限定したのであれば、UTSAの下で本来営業秘密として保護される可能性があった情報も、営業秘密ではなくなり得る、という判決が過去下されています(詳細は過去の弊ブログエントリ記事参照)ので、どういう影響があるか、気になっちゃうんですよね。

そのほかに注目すべき点については、前述のPatenly-OとかJones Dayの記事などをご参照あれ。