幸田露伴『五重塔』―職人魂
―第45号「レフティやすおの楽しい読書」別冊編集後記
●レフティやすおの楽しい読書●
2010(平成22)年10月31日号(No.45)-101031-幸田露伴『五重塔』―職人魂
http://archive.mag2.com/0000257388/20101031120000000.html
本誌本文末にも書きましたように、安藤忠雄さんが20歳の頃に読み、影響を受けたという本書。
私ももっと若いうち、たとえば工業高校時代にでも読んでいれば、どうだったろうかと考えてしまいます。
高校時代、学校から夏休みに、志賀直哉の『和解』や夏目漱石『こころ』などを読まされました。
それぞれ父親と息子の親子関係、友情と恋愛の葛藤など、青年期の普遍的なテーマでもあるのかもしれませんが、少なくとも当時の私にはまだ時期尚早の本でした。
本をいうものは、やはりそれなりに読む時期というものがあるのではないか、と思います。
同じ年齢であっても、成長の度合いが同じとは限りません。
成長の度合いに差があっても、共通の話題性があれば、それなりに反応することが可能です。
私のように工業高校生の場合なら、物作り職人の魂を描いた本書『五重塔』のような本なら、もっと心から興味を持って読めたかもしれません。
そして、それなりの影響を受けたかもしれません。
こういう本を選ぶ方が生徒たちのためになっていたのではないか、と今の私は考えます。
確かに文章は高校生には難しい面もあるかもしれません。
しかし、細かい意味は分からなくても、ストーリーに引かれて読み切ることは可能だろうと思います。
それだけの力と内容を持った作品です。
実際に読むにも、長さ的に負担になりません。
文庫本で100ページ程度の中編、せいぜい長い短編ぐらいです。
しかも、新聞に連載されていたものですので、章建ても短く、各章を一つ一つ読み切ってゆけばよいのです。
『千夜千冊』の松岡正剛氏も高校生時代に読んだ、といいます。
(第九百八十三夜【0983】04年5月28日 幸田露伴『連環記』
)
工業高校(今は別の呼び方をするのかな?)の国語の先生、どうでしょうか?