暗やみがもうもうと立ち込まってる小さな空間
細やかなオレンジ色の照明が本のページを撫でさする。
幕が上がってスポットライトが当たる舞台の主人公のように
今この時空間をきっちり詰めているのは輝いてる本、それが伝える心。
東雲の空を飛んでいる飛行機の中、
気圧差に反応した体の威圧感のように
変に分からぬ感情が渦巻いて湧き上がってしまう。
ぐっと抑えながらつとめて背けていた感情の塊が
堰が切れるように、水が溢れるように迸る。
『やっと花は咲いたのに春は過ぎてしまうね』
肌をえぐりとるように痛く染みる文章でもないのに
涙が溢れ出てしまった。
根拠ない淋しさー
ほんのり染み込まれる感情。
除隊を祝って友達とワイワイはしゃぎなが旅立ったのに
思いのほか気分の変化に戸惑ってしまった。
もしや横で、後ろで眠ってる友達にバレてしまうんじゃないかとすぐに涙を振り払った。
俺は知っている。
別れはただその言葉だけで悲しいものだと。
終わりは引き戻せないから淋しいものだと。
良不良は問わず最後の一歩を踏み出す時は淋しさがついてしまう事だと。
これは
やり尽くせてなかったから惜しむわけではなく、
全てを注いでやり尽くした後の空虚感がもたらした淋しさだと。
何を得る為に旅立ってるのかー
何を捨てる為に旅立ってるのかー
空けてまた詰める。
空けて詰める、
それを繰り返すのが
旅行だし
愛だし
人生だろうね。。
