新型コロナウィルスの感染拡大のなかで、うつになる人や自殺者が増えています。
北里大学の研究によると、昨年7月からの第2波で、調査した約2700人のうち18.35%がうつ病であることがわかりました。うつ病の有症率は、パンデミック前の2~9倍に増加していました。
うつ症状や孤独感の有症率を研究しているアメリカのインディアナ大学の研究では、なんと3分の1の人にうつ症状が認められたといいます。18~94歳の米国成人約1000人を対象にした調査です。
この研究で興味深いのは、メンタルヘルスのよりよい結果が得られたのは、対面による社会的つながりや性的つながりを維持している人。リモートがいくら便利で、頻繁にリモートでつながったとしても、頻繁に対面している人ほど、うつ症状や孤独感を下げることはできませんでした。やはり、メンタルヘルスにとっては、人と人との直接的なふれあいが重要ということです。
新型コロナウィルスの予防行動として、人との距離をとることや「ステイホーム」が提唱されていますが、最近では、家族やいつも会っている人たちとともにいる「ステイ・ウィズ・コミュニティ」がよいという考え方も出てきています。
心を守るためにも、家族や身近な人とのかかわりの大切さに気付かされました。
人間関係が健康に及ぼす影響についてお話しする前に、うつ病を防ぐには果物や野菜がいいという研究結果があるので、ちょっと紹介しましょう。
韓国の建国大学の論文では、野菜や果物摂取量が増加するにつれ、男性ではうつ病の有病率が6.4%から2.5%に、女性では11.4%から6.6%に減少したというのです。
果物と野菜をとると、うつ病が減るという根拠はこれから調査が必要ですが、果物や野菜をしっかり食べて、体を動かし、「貯筋」をすることは、心の健康にとっても、体の健康にとっても大切なことは言うまでもありません。
支え合う相手がいることの影響は、心の健康だけに限りません。アメリカの国立健康統計センター(NCHS)によると、結婚しているかどうかによって、心疾患の患者さんの予後に大きな差が生じています。未婚の心疾患の患者さんが約4年後、心筋梗塞を起こしたり、心血管疾患で死亡したりする率が、結婚している心疾患の患者さんに比べて、52%高いことがわかりました。
ただし、ただ結婚していればいいというわけではなさそうです。結婚の効果が、薬にも、毒にもなり得るということを、アメリカのプリガム・ヤング大学が調査しています。
この研究では、幸せな結婚生活を送っている人は、未婚者に比べ血圧が低いことがわかりました。けれど、結婚生活がうまくいっていない人は、独身者よりも血圧が高いという結果になったのです。大切なのは、結婚という形ではなく、信頼でき、支え合えるような人がいるかどうかです。
これまで、運動や禁煙、肥満の改善などが健康に与える影響は盛んに研究されてきました。今後は身近な人間関係が与える健康への影響についても注目していく必要があるでしょう。
もともとは他人だった夫婦も、長年、同じような生活習慣を続けているうちに、顔や体型が似てくるということがあります。気付かないうちに、相手のしぐさや考え方をまねしていて、何となく、似た者夫婦になるのでしょう。
でも、病気まで似た者夫婦になるのは、いかがなものでしょうか。実際、筑波大学の研究グループによると、夫婦は同じ病気になりやすいことがわかりました。
この研究では、40歳以上の約8万7000世帯を対象に、夫婦ともに同じ病気で治療を受けているか、夫婦ともにその病気になっていないかという「一致率」を調査。すると、高血圧でさ73.2%、糖尿病と脂質異常症はともに86.5%と高い割合で一致していたのです。
これをどう考えたらよいのでしょうか。例えば、妻が高血圧になったら、今、夫は高血圧ではないとしても、将来なるかもしれないと考えて、一緒に生活習慣病を改善していくことが大切です。
仮に夫が糖尿病になったら、妻も生活を見直し、一緒に食事療法をしたり、ウォーキングをしたり、スクワットしたりすることで、夫の病気を改善するだけではなく、妻が糖尿病になることを未然に防ぐことができるということです。
縁あって、人生のパートナーになった二人。心の面でも支え合うことができ、食事や運動などの生活習慣でも楽しんで継続しながら、お互いに健康を高め合えるような関係ができるといいですね。
「いい関係を」とは、言うは易しですが、身近な人との関係をよくして、「今ここ」を大切に生きていくことが、数年先の健康にもつながっていきます。
鎌田實
(毎日が発見 2021年4月号)