『縄文人のライフステージ』
誕生
母子ともに命がけの出産は女性にとって、大仕事。無事に生まれました!
幼少期
野山を駆け回りながら、すくすく成長。ですが、まだまだ油断は禁物。ちょっとした病気で命を落とすことも。
成人
成人として認められる抜歯も済ませ、これから働き盛りとして集落の頼れる存在に。
出会い
偶然出会った隣りの集落の娘と恋に落ちます。
一緒に暮らしだす
無事に子どもに恵まれ、女性が世帯を切り盛りしながら幸せな生活を送ります。
ますます狩りに精を出す
世帯を支える働き手として、今まで以上に仕事に励みます。
狩りの怪我で亡くなる
イノシシ狩りに行った際に負った怪我が悪化し、あっという間に命を落としてしまいます。
埋葬
同じ集落の人も眠る墓域に埋葬されます。悲しいけれど、生活の場とお墓が近いことで心は少し癒されます。
当時の子どもたちにとっては、生活のすべてが遊びであり、その遊びを通して生きる知恵を獲得していったと考えられます。
女の子であれば、母親や祖母の側について、お手伝いをしながら、一緒に森に入り、どんな植物が食べられるのか、薬草はどれか、どこにどんな植物が生えているのかなど、植物食料に関しての知識を蓄えていったことでしょう。森の中に実るアケビやヤマブドウは恰好のおやつにもなりました。食料の知識はもちろん、布織りの技術や土器を焼く技術等も大人と一緒に過ごすことで獲得したはずです。
男の子の場合、3歳、4歳の頃から、周りに狩りの道具を作る大人がいれば、そのそばに座って、じっと手元を見ていたことでしょう。親方の技を見て学ぶ、現代の職人の弟子のように、小さな頃から大人の姿を見て、脳裏に焼き付けるのです。その後は実践です。遊びの一環として見よう見まねで石器や鏃(やじり)を作ってみて友達と出来の良し悪しを競いながら技術を向上させていくのです。もちろん、道具を作るだけでなく、追いかけっこや木登りなどの遊びはしていたことでしょう。魚釣り競争などもしていたかもしれません。
男女ともにこうしてそばにいる大人の様子を観察するところからはじめ、実践しながら生き抜く力をつけていったことでしょう。
特に縄文時代の後期以降、盛んに行われた抜歯は、「虫歯になったから」とか、「歯周病で歯がぐらぐらするから」という理由からではなく、大人になった証としてのことだったようです。 (現代の医者の役割も担っていたシャーマン(呪術師)によって抜歯は行われたようです)
出土した骨の状態から地域差はありますが、だいたい上あごの左右の犬歯を成人の儀式の時に抜いたと考えられています。無理矢理引っこ抜くのですから、出血もかなりしたでしょうし、当時は麻酔があるわけではないため、その痛みは想像しがたい激痛だったのではないでしょうか。痛みに気絶する人もいたかもしれません。しかし、その激痛に耐えてこそ大人の証だったと考えられます。
東海より西の地域…左右の犬歯を抜く
関東…左右どちらかの第二切歯を抜く
こうした抜歯は成人儀礼以外にも、結婚や身内の死など様々な機会に行われていたと言われています。
いずれにしても、考えるだけでこちらの血の気がひきそうな話ですが、大人になるということは今も昔も本当に厳しいことです。
今よりも人口が少なく、そして近隣の集落とも距離があった縄文時代。日常的に他の集落の人と出会うことは難しいでしょう。
そこで考えられる出会いの場はいくつかありますが、その1つとして、近隣の集落が集まって行う祭りが大きなイベントだったのではないでしょうか。
縄文時代の祭りは、祀りの場でもあったと考えられています。つまり、人々が集まり、自然に対して祈りを捧げる場であったということ。「シカやイノシシ、魚介類がたくさん獲れるように」「森にクリやクルミがたくさん実るように」「子宝に恵まれるように」「皆が健康で健やかに暮らせるように」など、祈りを捧げる祀りをしていたと考えられています。
実際に縄文時代の遺跡からは、何らかの儀礼を行ったとされる場所が数多く発見されており、祈る道具として使われたとされる土偶や石棒なども見つかっています。
そして祀りと同時に祭りも開催されたはず。遺跡からは土笛や動物の皮を貼って太鼓として使ったと思われる土器も発見されていますから、歌や音楽が流れて賑やかだったことでしょう。
娯楽が今のように沢山あるわけではありませんから、長老から働き盛りの人たちはもちろん、子供たちも参加を心待ちにしていたはずです。
みんなが集まる場で知らない集落の者同士が仲良くなるには、車座になって食事を共にすることが一番です。
どこの森にはどんなキノコが生えている、今年はサケがよく獲れるなど生活に欠かせない情報を交換したり、シカの角で出来た自慢の釣り針を見せ合ったりしたのかもしれません。
そして時には恋の予感も・・・・・。隣りに座った子は面白くて話しやすいわ、あの焚火の向こうに見えるあの子は逞しくて、狩りも上手いんじゃないかしら。シカの肉を分け合いながら、祭り独特な高揚感の中、素敵な人との出会いがあったかもしれません。
祀り(祭り)の場は、祈りを捧げることはもちろんのこと、出会いの場としても大切にされていたのではないでしょうか。
知られざる縄文ライフ (誠文堂新光社)