《フィールドワーク》

フィールドワークは、現地調査とその調査方法の総称です。フィールドワークの目的は、主に「問題の発見」と「問題の解決」の2つに分けられます。その他、漠然とした仮説や問題意識に基づいてフィールドワークに臨むことで問題の構造を明確にしたり、問題解決のヒントそのものを求めたりするためにフィールドワークを実施する場合もあります。いずれもデータを収集、分析、構造化するという流れになります。
フィールドワークの調査方法の中でも特徴的な手法は、観察(参与観察)です。現場に出向き、「異人の眼」を持って対象を観察します。この「異人の眼」とは、当事者でも評論家でもなく、あたかも初めて訪れた外国の街並みを眺めるように、好奇心に従って素直に出来事を把握する姿勢を意味します。そうして、興味を持った場面を写真に撮ったり文章にしたりすることで記録します。

記録の仕方については、例えば出来事を「事実」と「判断」に分けた上で記述する方法があります。街を歩いているときに観察した店の記録の場合、「店に12人の客がいた」は客観的な事実、「店がにぎわっている」は主観的な判断といえます。主観と客観を行ったり来たりすることで、偏りのないデータの収集・分析が可能になります。

 

《プロトタイピング》
ものづくりに携わっている方であれば、プロトタイピングという言葉自体は聞いたことがあるはずです。ただし、その意味や目的はさまざまです。具体的には、洞察を整理するためのプロトタイピング、共感を得るためのプロトタイピング、製品化のためのプロトタイピング、の3つが挙げられます。

[1]は、フィールドワークなどで得た洞察を整理するために、身近にある素材や道具を使って洞察を形にすることです。実際の形にすることで洞察が整理され、次にすべきことが見えてきます。

[2]は、コンセプトがある程度まとまってきたときに、チームのメンバーや外部の意思決定者に対して共感を得るために行います。共感を得たいポイントに絞って、紙や粘土で作製したり、寸劇や映像にしたりするなど、価値を相手に伝えるための方法を自由に選びます。

[3]は、対象とする製品やサービスが実際に動作機能するかということを確認するためのものです。従って、この場合は完成形に限りなく近い物を作製します。

プロトタイピングと聞くと、[3]を想像した方が多いのではないでしょうか。しかし、日本の企業が注目すべきは、[1]や[2]です。あまり作り込まず、早い段階から形にして気づきを得るというプロセスを繰り返すことが、ユーザーの視点に立ったイノベーティブな解決策を考案するための重要なポイントになります。

 

富田欣和(慶応義塾大学大学院 非常勤講師) 

石橋金徳(慶應義塾大学大学院 特任助教) 

  (日経ものづくり2013May)