エリックとは、数年前、ベルギーでのワークショップで出会った。彼はワークショップの最中はひと言も言わずに、終わってから、自分が私をアムステルダムまで乗せていく係なのだと伝えてきた。私は疲れきっていて眠りたかったが、出発するとすぐに、彼は「私の人生についてお話させてください」と言うのだった。そのとき、話を聞くことは、お世辞にも楽しそうなこととは思えなかった。それでも私は、「わかったわ。聞いてますよ」と言ったのだが、いまでも、彼がしつこく頼んできたことに感謝している。

 それより十年前、エリックの人生は崩壊した。それまで一生懸命軌道に乗せようとしていた事業のパートナーふたりが、彼とはもう一緒にやりたくないと言い出したのである。二対一の決定だったので、エリックは口を出すことはできなかった。ふたりは、三万五千ドルの現金か、共同で所有していた事業会社の株のすべて (株はまったく無価値だった) のどちらかをあげようと申し出た。

 エリックは仰天し、すぐにオフィスを出て家に戻った。家に入るなり、妻に「話さなければならないことがあるんだ」と言った。だが、彼女のほうが逆にこう言ったのだ。「私も話があるのよ。離婚してください。好きな男性に出会ったの」

 エリックは言った。

「人生のパートナー三人が三人とも、同じ日に別れたいと言ったのですよ。もうどうしようもなくて、それまでは無神論者でしたけど、これだけ人の人生をめちゃくちゃにできるのは天しかないって思いました。その夜、私は祈ることにしました。神にこう言ったのです。「もしこれがあなたのしわざなら、何か私に言ってください。あなたの指示にすべて従いますから」 

 その夜、夢を見ました。夢で私は、ひどい吹雪のなか、アルプスの山中を車で走っているんです。道は氷でおおわれ、道から落ちないように、ハンドルにしがみついていなければなりませんでした。一度は車がコントロールを失い、崖下に落ちそうになりましたが、なんとか大丈夫でした。頂上を越えると、吹雪はやみ、太陽が輝いていました。道路も安全で、しばらく走ると小さな小屋につきましたが、窓にはろうそくがともされていて、温かい食事が待っていました。

 この夢から、私はパートナーの申し出を受けて、その価値のない会社の株を全部もらうことにしました。なぜって、その会社がキャットフードの会社で、夢で運転していた車がジャガーだったのです。パートナーたちは大喜びでした。三万五千ドル出さなくてすんだ、と思ったからですよ。でも私にはわかっていました。なぜだかわからないけれど、この申し出を受けることで、私は彼らふたりと妻を、自分の手から放してやらなければならないと思ったのです。別れを言わなければならないってね。皮肉にも、私をお払い箱にしようと思っていたのは彼らのほうだったのでしょうけれど・・・・・・。そのすぐあとに、この会社の事業を助けるようなチャンスがおとずれてきたのです。たしかに夢が予言したように、最初の数か月、事業を軌道に乗せるのは本当に大変でした。でも、あの夢のおかげで、すべては必ず良くなっていくことがわかっていましたから、とにかくがんばりました。

 今日私の会社は、ベルギーで最も大きな成功を収めている企業のひとつで、私は同じようなベンチャー企業を育てるのに多くの時間を割いています。そして、最高にすばらしい女性と再婚しました。彼女は本当の意味で人生のパートナーです。こんなふうになるなんて、とても考えられませんでしたよ。この計画を知り得たのは神だけです。毎朝私は祈りで一日をはじめます。前の人生から私を切り離してくれたことに感謝するのです。私には、あの三人から離れる勇気などとてもありませんでしたからね。人生が引っくり返っている人に出会うと、私はこう言ってあげます。『神様があなたを助けているのですよ。心配することは何もありません。本当ですよ。保証します』」

 

7つのチャクラ   Anatomy of the Spirit   (サンマーク文庫)