睡眠
心身ともに疲れがたまった時、感覚器官の機能が低下し、それぞれの対象を知覚できなくなります。この状態が睡眠です。つまり感覚器官が疲労すると身体経路 (スロータス) がカパ・ドーシャで囲まれ、感覚器官が受けた刺激を運ぶ働きが緩慢になり、やがては運ぶのをやめ、眠りにつくというのです。これは数千年前に考察された睡眠の発生機序ですが、非常に興味深いものです。
✨健康によい睡眠時間
ヴァータ体質…八ー九時間
ピッタ体質…七ー八時間
カパ体質…六ー七時間
身体の生理機能を、ヴァータ、ピッタ、カパという三つのドーシャで説明したアーユルヴェーダは、精神面をサットゥヴァ、ラジャス、タマスという三つの性質で説明しています。本来はヴァータとピッタがラジャス、活発(激質)、カパがタマス、不活発(惰質)を起こしますが、ドーシャのバランスを保ち、それぞれのドーシャの長所が現れるような食生活をすることによって精神面でサットゥヴァ(叡智)も増えてきます。精神を向上させるということはサットゥヴァを増やして、人間の心を清らかにしていくことです。この三つの性質のうち睡眠を起こすのは不活発なタマスで、ラジャスは活発さを起こします。サットゥヴァも眠りを起こしません。ある程度ラジャスが働くと自然に激質が下降し、タマスが上昇してきます。そして、人間が眠りにつくという説明があります。瞑想などで特別に精神の訓練をし、特別な食事法および生活法をすることによってサットゥヴァが増え、純粋な幸福を感じることができるようになります。サットゥヴァが増えると睡眠時間が少なくなりますが、ラジャスが抑えられているので新陳代謝が減り、異化作用が減少しますので、体力も保たれ、健康で落ち着いた高尚な性質が自然に出てきます。
季節は体内のドーシャに直接影響しますから、季節によって睡眠時間を調節することが紹介されています。冬は夜が長いので長時間寝ようという気持ちになりますが、カパが蓄積する時期ですから、むしろ睡眠時間を少し短くする必要があります。特に朝早く起床することがすすめられています。夏は自然に体力が弱まる時期ですから、よく睡眠をとる必要があります。しかし、夏は夜が短く、しかも日の出以後も寝ているのはよくないので、昼寝で不足した睡眠を補う必要があります。同じように暑い地域に住む人は睡眠時間を少し延ばし、寒い地域に住む人は少し減らすべきです。
昼寝はアーユルヴェーダの考えでは「油性」質をもっていて、カパを増やす働きをします。夏以外の昼寝は健康な人には禁じられています。夜更かしは「乾性」という性質をもっているので、ヴァータを増やします。夜遅くまで起きていると、老化現象が早く現れるようになります。しかし仕事の関係で夜起きていて昼に寝る習慣になっている人がいますが、それを規則正しく行えば健康にあまり害にならないということも、アーユルヴェーダに示されています。不規則な睡眠がよくないということです。
疲労がたまっている人、激しい怒り・悲哀・恐怖に襲われている人、喘息・下痢・消化不良・精神病の人、高齢の人、子供、病弱な人、空腹の人、のどが渇いている人、痛みを感じやすい人は、夏以外でも昼寝をすることがすすめられています。肥満の人、脂っこい食事をよく食べる人、カパが優勢な人は昼寝が強く禁じられています。
簡易ベッドで寝るのは三つのドーシャを緩和しますが、床の上に敷き布団を敷いて寝るのはヴァータとピッタを主に緩和します。畳や床の上にじかに寝るのはヴァータを増やし、「乾性」質を増やします。また病的出血(ラクタピッタ)を治す働きをします。快適なベッドで気持ちよく寝るのは心臓によく、体重を増やし、忍耐力を養い、疲れとヴァータ・ドーシャをとり、精力を高める働きをします。
激しい恐怖、心配、怒り、煙(たばこの吸いすぎまたはアーユルヴェーダにおける薬用喫煙のとりすぎなど)、運動(就寝時間に横にならず、体を動かしていること)、断食、不快な寝床、サットゥヴァが増えること、タマスを抑えること。これらが眠気をなくす原因としてあげられています。
睡眠が過剰になった時、次の対策が紹介されています。
断食させること、体をパンチャカルマ療法によって浄化すること、精神的に心配させること、不快な寝床を与えること、セックスをすること、タマスを抑えて、ラジャスを活発にさせること、サットゥヴァを増やすこと。これらの方法で寝すぎの人の睡眠を減らし、正常に戻します。
✨眠りに入りやすい環境をつくるためにすすめられること
オイルマッサージ
沐浴
肉のスープ
牛乳
ヨーグルト
甘い味と油分の多い食事
ブドウ
サトウキビでつくった食べ物
酒
心を喜ばせること
気持ちのよい香り
気持ちのよい音(音楽など)
体を気持ちよくなでること
耳を油でマッサージすること
足の裏を油でマッサージすること
寝床を快適にすること
寝室のインテリアを変えること
(壁・カーテン・ベッドシーツなどに主に緑と青色を利用する)
眠りに入りやすい時間に就寝すること
配偶者に抱かれること
気持ちのよいセックス
昼の行動がよくできたという満足感
また、物事に執着せず、あらゆる欲望から自由でいると、つまり離欲の境地に達するとよく眠れるようになります
アーユルヴェーダ健康法(春秋社)