発表会と、その打ち上げが

お開きになり



遠く離れたその地からの帰り道


憧れの人と、スタッフさん達

そして私を含めた

数人の生徒で


少し良い席の切符を買って

皆で電車に乗り込んだ。







車内では

程よくお酒を召した憧れの人が

機嫌よくお喋りに興じている。


その声を聴いていると

時間はあっという間


電車が進むにつれ

だんだんと帰り道が分かれ

少しずつ集団は小さくなった。




最後に残ったのは

憧れの人と、私と、Bさんの3人。


改札を出て、お酒を片手に歩いていく。





この日のことを話しているうちに

Bさんは不満を漏らし始め


それを耳にした憧れの人は


「さすがに今のはちょっと、、!」

と、苦言を呈す。




それもそのはず。


Bさんの言い分は、

自分の事しか考えていない。



憧れの人が、

ひとりひとりの生徒を思い

真剣に向き合ってくださっていることを

すっかり忘れているかのようで


聞いているだけの私でさえ

「どういうこと?」と

首を傾げたくなる。





だけど、

お酒も入って、その勢いは止まらず


「先生は私よりも

りぃさんが可愛いんでしょ!?」

なんて


見当違いも甚だしいセリフが飛び出す。




ついには

「もう私の指導は

してくださらないってことですか?」

「それなら、もう私は身を引きます」と


完全に“自爆”のようなことを言って

彼女はひとり、去っていった。



憧れの人も

それをただ静かに見送るだけ。









私はひとりになると

ふぅ、と溜め息をひとつこぼし

そこからの帰り道を調べだす。


終電はとうに終わっていた。

歩けば30分少々か…




そんなことを考えていると

一服済ませた

憧れの人が近づいてきた。



「彼女、明日になったら

平謝りしてくるかもしれないけどね、、」

「まあでも、うーん、、今日はもう疲れました」


そうして少し、お気持ちをこぼして

彼は帰路に着いた。

 




私も、彼の背中を見送った後

静かに歩き始めた。


何かが変わる予感はある。




誰にでも優しい憧れの人が

きちんとご自分の意志を伝えたこと


そして私も

Bさんに思っていたことの一部を

伝える機会を得たこと


それが、目の前で展開された不思議。




やっとBさんとも離れられるかな、、


そんな淡い期待を心に浮かべながら

自宅へと到着した。