True A Cross ~真実の十字路~

True A Cross ~真実の十字路~

Twitterでのネタ話を元に読み物を書いています。
実在の人物名など出てきますがフィクションです。
またミステリでもサスペンスでもなく、あくまでもネタを
まとめた読み物なので、推理の矛盾とかお気づきの点があれば
こっそり教えてください。

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配属当時の自己紹介で納豆は食べれません・・・とに無理やり食べさせられた口に出したが故に、これを食べれば好き嫌いもなくなると
無理やり食べさせられた照井さん特製パスタの味を思い出して、僕は首がちぎれるんじゃないかと思うほど何度も首を横に振った。

「ほんならええがよ、ハチ。そんなにえらかったらソファで仮眠とっときゃあ。いざという時に動けんと困るが。」
そう言いながらも、僕の机の上に缶コーヒーを置いて照井さんは向かいの自分の席に座る。

冬木警察署刑事部捜査一課所属、八谷 玄師(はちや けんし)。僕の冬木警察署での立場と名前。
ハチというのは照井さんがつけた僕の愛称だ。
犬みたいな呼び名だから僕は気に入っていないが、自己紹介をした時に照井さんが開口一番、
「じゃ、お前ハチな。」
と、発言してそのまま周りにも定着してしまったという、少し悲しい思い出付きだったりする。
その愛称のせいか、照井さんのことをよく思わない捜査員の間から『照井について回る飼い犬』的な嫌味を言われる事も多い。
「弱ぇ犬ほどよく鳴くんだで、鳴かせとけ。お前は胸張っとりゃええわ。」
嫌味を言われた後、僕の顔はきっとわかり易いほど落ち込んでいるのだろう。
その度に照井さんは、僕の背中をバシッと叩きながら少しだけ名古屋弁が混ざった口調で言うのだ。
自分ができる事を精一杯やりゃあいいんだわ、と軽い口調で付け加えて。
そんな時は大抵いかつい顔が崩れて笑っていて、ずっと怖い顔をしていると思われがちだけど案外笑っていることの方が多いことも僕は知っている。
見た目もやることも怖いけど、相手をしっかり思いやる優しさを持っている人だと改めて思う。

照井さんがそんな人間だって知っているから、僕はこの人と今まで捜査を一緒にしてきたんだよな・・・なんて、いかつい顔をぼんやり見ながら考えていると、12時を知らせるチャイムの音が鳴った。

眠気覚ましに外の商店街まで昼食に行くぞと照井さんに誘われ、僕らは顔なじみの店へ向かって署を出たその時だった。

照井さんの携帯が鳴り、発信者を見た照井さんは怪訝そうな顔で電話に出た。
「はい、照井ですが。…ああ、はい、いつもお世話に・・・え?」
照井さんが突然敬語で話し出す。
普段はよっぽどじゃない限り上司に対してもタメ口で話す人だから、それだけで特別な相手からの電話だとわかる。
「じゃあお義母さん、ユキは・・・ええ、自宅も、勤務先も・・・」

『ユキ』。
確か、照井さんが半年後に結婚するんだ・・・と話していた、恋人の名前だ。
「ユキの料理めちゃ上手いもんで最近食べ過ぎとるんだわ。式上げる前にダイエットしんとなぁ。」
なんて惚気話を、酒の席でよく照井さんから聞かされている。
電話の向こうから漏れ聞こえる女性の声は話から察するにユキさんの母親のことなのだろう。
照井さんの顔がどんどん険しい表情になっていく。
何かあったのだろうか。
「はい、何かあれば連絡を・・・こちらも知人に声かけてみますので・・・。」
そういって照井さんは電話を切った。

「何かあったんですか?」
明らかにいつもと違う照井さんに僕は思わず声をかけた。
「ユキが…昨日の晩から泊まりに来るはずだったのが来とらんと。ユキの実家からな・・・」
照井さんが硬い表情で話した。

おそらくこの時、僕の表情もかなり強張っていただろう。
照井さんも僕も全く同じことを考えていたのだから。
僕らが連日捜査に追われている女性連続失踪事件。その関連性。


これが、今回の事件の始まり。
そして僕と照井さんにとっての長い1週間の始まりだった。