True A Cross ~真実の十字路~ -2ページ目

True A Cross ~真実の十字路~

Twitterでのネタ話を元に読み物を書いています。
実在の人物名など出てきますがフィクションです。
またミステリでもサスペンスでもなく、あくまでもネタを
まとめた読み物なので、推理の矛盾とかお気づきの点があれば
こっそり教えてください。

ユキさんのマンションから車で約20分。

小劇場やライブハウス等がいくつもある街の一角に、彼女の勤める店「RAVEN」があった。

扱っているのはオリジナルのレザー・シルバーアクセサリー、インポートファッションなど。

まるで照井さんの好きなファッションやアクセサリーを集めたのではないかと思えるような店内では、すでに何人かの従業員が2人の捜査員に事情聴収をされている最中だった。


「課長の奴、ちっとは見直したるかな。」

照井さんのつぶやきに視線を前へ送ると、その先にいた捜査員がこちらに気が付き手を振る。


「ああ、やっと来た。照井さんシロ君お疲れ様です。」

茂木 欣一。僕らと同じ捜査一課のメンバーの一人で、数少ない照井さんの理解者だ。

さっきの照井さんのつぶやきは、色眼鏡で見たりしない人員配置で聞き込みを行ってくれていることへの照れ隠しだろうな、なんて僕が思っていると茂木さんが声をかけてきた。


「シロ君お疲れ様。課長にたっぷり絞られたみたいだねー。それで何か収穫あった?」

「あ、いえいえ。茂木刑事こそご苦労さ・・・」
僕が言いかけるのを遮って、茂木さんが僕の方に手を置きつつ無駄に爽やかな笑みを浮かべながら訂正する。

「やだなぁ、シロ君てば。欣ちゃんて呼んでくれればいいのに。他人行儀だなぁ。」

・・・こちらも訂正。照井さんの理解者というよりは、やっぱり照井さんの「仲間」だ。良くも悪くも。


「先輩をちゃん付けで呼ぶなんてできませんよ。周りにも示しがつかないですし。」

僕がもっともらしい理由を付けて説明すると、茂木さんはさらに爽やかな顔で、

「気にしない気にしない。僕と君の関係じゃないか。ねぇ、照井さん?」

なんて同意を求めて照井さんに話をふる。こうなるともう、止める人間もいなくなる訳で。

「そうか、おみゃあ浮いた話がにゃあとは思っとったが、欣の字が相手か。」

そんな危険すぎる事を言いながら照井さんもニヤニヤしている。


「んなわけないでしょ!2人とも変な事言うとらんと早よ聞き込み続けやなあかんでしょ?」

「やっぱシロ君の関西弁聞くと和むよねー。こういう楽しみがないとやる気でないもんね。」

僕が関西弁まじりに否定すると茂木さんは嬉しそうにそんなことを言いながらニコニコしている。

「ま、シロいじりはその位にしときゃあ。なんかええ事喋ったか、店の奴ら。」

照井さんが何気なくさらっとひどい事を言いながら、茂木さんに確認する。

「ん~・・・照井さんて、ここの常連だったよね?『葛城 壮平』ってスタッフ知ってる?」

茂木さんの質問にしばらく考え込んだ後、照井さんが思い出したように言った。

「確か、ユキがこの店オープンする時に大須のオーナーに紹介して貰った店員じゃなかったか?真面目そうな感じの。」

「そうそう、他の店員さんがそんなこと言ってたよ。どうも、彼がユキさんの事をストーキングしてたんじゃないかって事と一緒にね。実際、マンションの周りで何度か彼の姿が目撃されてるみたいだし。」

照井さんが首をかしげる。

「オーナーの紹介ってのもあるけどよ、壮平の奴そーいう感じにゃ見えんかったがなぁ・・・」

照井さんがそう言うからには何か根拠があるのだろう。

僕は茂木さんに確認がてら聞いてみる。

「その、葛城 壮平って人には聞き込みしたんですか?」

「それが、今日はまだ店に来てないみたいなんだよねぇ。遅刻の連絡もないみたいでね。さっき課長に連絡して、加藤くんに自宅へ向かってもらったよ。」

僕は少し安心した。隣の照井さんもしかめ面にならなかったという事は似たような思いなのだろう。

課長が手配してくれたのは、加藤 隆志刑事。茂木さんとコンビを組んでいる捜査員だ。

「ほいでよ、その壮平の事を話とった店員どいつだ?」


照井さんの問いかけに茂木さんが応えようとした時、スッと店の奥から一人の青年が顔を出した。

「照井さんこんにちわ。お久しぶりです。」

その青年の顔を見て、照井さんが少しだけ曇ったのがわかったのは、その場にいる中で僕だけだっただろうか?

「お前か、慧(けい)。仲間売るような真似して楽しいか、おみゃあは。」

照井さんが珍しく害意を含む発言をする事に驚きながら、僕は慧と呼ばれた青年の顔を見つめる。

「僕はただ、壮平君が雪さんの事をよく見ているってお客様に言われたことを話しただけですよ。売るなんてとんでもない。」

照井さんの言葉に傷つく様子もなく微笑みながら話す青年を僕は観察していた。


彼の胸には「天城 慧(KEI AMAGI)」と書かれた名札がついていた。

中性的な顔立ちだからだろうか?童顔で柔らかそうにみえる表情。

それに反比例するようなどこか矛盾した大人びた雰囲気を持っている。

身長は僕と同じくらいだろうか、男性としてはさほど高くない身長。

男性的なゴツゴツした体格ではないが、かといってひ弱そうな感じでもない。


いわゆる、おとなしそうな好青年に見える彼に対して照井さんは何故嫌味のような発言をしたのか。

僕が二人の顔を見比べながらぼんやりと考えている時。


店にもう一人の青年が飛び込んでくるのが横目に見えた。


(続く)