クライストはほぼゲーテと同時代(解説)なのだが、どこか現代的(?)。
訳文が素晴らしいのかもしれない。
アマゾネス(本書ではアマツォーネ)建国が戦争による凄惨な出来事の結果としたクライストの設定の妙。
本作ではお気楽で軽率な性格の設定のアキレウスの自分勝手な行動が、彼より真剣なペンテジレーアの怒りや悲しみと愛情がまじりあった複雑な感情を駆動してしまい、物語は悲劇的な結末へ。
なぜ女性ばかりなのに国民が減らないのか、それは物語の契機である”なぜか”アマツォーネ軍が突如現れてトロイア軍に加担する理由とつながる。
途中でペンテジレーアの妹のプロートエが捕虜を連れていくシーンがあったり、従軍している(?)少女たちが”薔薇祭”として薔薇を準備していたりすることが説明なく描写され、それらの理由がペンテジレーアによって後に一気に語られる時に感じざるを得ない何ともいえない居心地の悪さ。
アマツォーネの慣習は、戦闘で過剰に高揚する感情が性愛とリンクしてしまうことがある点(これが悲惨な性犯罪を生む)を利用しているともいえるが、実はそれが自身たちの過去とつながってしまっている痛ましさ。
さらにその慣習が形骸化しつつあり、愛情に純化され始めていた中で起きたからこその悲劇性。
ペンテジレーアのあのような殺し方が口づけKüsseとBisseの”混同”だったこと。
何から何まで本当によくできていて、一気に読み終わってしまった。
最近の戯曲と言われても、そうだろうなあと思うくらい。
考えたことがなかったのだが、言われてみればゲーテと同時代なのだから、クライストはナポレオン時代の人。
当然、戦争の悲惨さを身をもって知っている。
ゲーテと同じく公務についた時期があり、スパイ容疑で拘留されたりして危険な目にあっている(解説 というか獄中で本作を執筆していたらしい。畠中, 1963)。
だからからか、クライストは戦争を扱った作品が多いらしいのだが、どれも読みたくなる題材。
北方戦争がテーマの「ホンブルグ公フリードリッヒ」や、「ヘルマンの戦い」(解説によるとナポレオン軍のスペイン侵攻に着想を得ているという。ゴヤが描いたこれまた凄惨な戦闘。作品自体は私は知らないゲルマン民族のローマ軍反抗戦争らしい)など、いつか読んでみたい。
Kleist, v.H: Penthesilea. Ein Trauerspiel. 1808. 大宮勘一郎訳:ペンテジレーア 岩波文庫、2025