ぱっとみて、ぱっと買ってしまった短編集。
なぜかというと冒頭の短編のタイトルが「アントンと清姫」だったから。
高野先生だから当然ブルックナーのことだよね、それに歌舞伎がまざるの絶対読みたい!と思って読み始めたら、勘違いでいきなりがっかり・・・
とはいえ、面白かった。
この短編集は、ドストエフスキーを読み込んだファンなら無茶苦茶面白いはず。
私はほとんど読んでいないので、もし読んでいたら楽しめたなあと後悔。
なので、ドストエフスキーファンの方にはかなりおすすめ(一つだけチェーホフ)。
私が気に入ったのは二番目の「百万本の薔薇」。
不思議な読後感。
「医薬品(略)の類は、どれも十九世紀に化学合成が始まるまで、ほとんど植物から採れたアルカイドだった」というセリフから思わぬ方向へ。
なんか似たような話がシャラマン監督の映画にあったような、なかったような・・・・
「小ネズミと童貞と復活した女」は後半はスラプスティックな展開。
小ネズミのことをロシア語でムイシュカというらしく、この段階で、なるほど、あれとあれを混ぜるべくして混ぜたのですねという感じ。
うちの息子も先日読み始めていた。あれといっても長編でないほう。
知らずにどうなるかを言っちゃったんだけど。
すまん、息子よ。でも、どうなるかより、その過程に悲しさと美しさがあるのだからね(と言い訳する)。
そして、宇宙は人類に残された最後の開拓地だよね、あーあーー、あーあーあーあーあーー♬(こういうセリフが唐突に出るあたりで本作のテイストがわかるというもの)。
「プシホロギーチェスキー・テスト」は池袋界隈に住んでいたあの人の短編とラスコーリニコフな話が混ざるという、後者をちゃんと読んでいれば面白かったのだろうなあという一作。
くどいが、ドストエフスキーファンが羨ましい。
最後はチャカポコな話と人殺し多数のあの話が混ざる。
読み終わって、元ネタを強烈に読みたくなった。
これって高野先生の狙いでもあるのかなあ。
私はまず「悪霊」から。
高野史緒:まぜるな危険 早川書房、東京、2021