子ども2,こども3と鑑賞。
単なる”陸上競技にかけた青春”に留まらないストーリー。
そもそも魚富さんは私には年齢不詳な人です。
「ようこそfactへ」など、とても20台の若者が描いていると思えない展開(私よりよっぽど大人)。
いろいろな人物がでてきます。
名誉(順位)を追求する人。
業績(記録)を追求する人。
争うこと自体に価値を見出している人。
継続することに価値を見出している人。
挫折知らずの人。
挫折から這い上がった人。
挫折(敗北)と同時にやめてしまう人。
それしかないと思っている人。
それはあってもなくても些細と思っている人。
それが自分を一番引き立てると思っている人。
登場人たちはどれかが組み合わさっている。
どんな競技、というか、どんな仕事、というか、生き方の選択にまでつながる話。
そもそも自分はどうして走っている(この競技をしている/この仕事をしている/生きている)のだっけ?という問いかけも。
ところで前半は普通にアニメーションで、後半がロトスコープでぬるぬる動くのはどうしてかなと思ったのですが、最初、小学生編の物語がやや”漫画っぽく”、後半から真実味のある話になるからかなと考えていました。
後から、もしかして走る”動き”にこだわりたい(あるいは子供時代と高校以後で走りが質的に変わることを描きたい)ということなのかなと思いなおしたり。
走る姿勢を描くのは、意外に難しいのかもしれません。
普通は前傾姿勢にしてしまいがちですが実際はそうでもないですし、ゴール以外はそれほど胸を反らしてもいない。
蹴る側の足も伸ばして描いてしまいそうだけど、現実には踵を臀部にすぐ引き付けて腿をあげないと速く走れません。
腰の位置もジャンプするように上下しないし。
走る時以外の選手たちの動きも丁寧に描かれていて大変にリアル。
スターティングブロックの踏み台の位置を継足で確認する。
ブロックが動かないように前後のピンのところを何度も踏む。
体が冷えないようにジャンプしたり、手足を回したりする。
「位置について(映画は on your mark)」で一礼する。
「よーい(映画ではset)」では選手の腰の高さがばらばらで、号砲後も前傾から徐々に体を起こす普通のスタートあり、力強いロケットスタートあり。
ああ、懐かしい。
あ、でも”現実”はあんなに鬼の形相で走ると「力むな!」と怒られます。まま、演出なのだからつまんない揚げ足とりはいけません。
あと「くそ―野球部!」のセリフが陸上部あるあるでおかしかった。うちの学校は「くそー、アメフト部」でした。
高校時代の自分に見せたかったなあ(早く生まれすぎた)。
でも、今現在の自分でも思うところがあり、ラストで泣いてしまいました。
よかったね、二人とも。
子供たち(高校 弓道部+中学 卓球部)には、「今、この映画を見ることができる君たちが羨ましい」と伝えたけど、分かってくれたかなあ。
映画「ひゃくえむ。」 魚富・原作 岩井澤健治・監督 2025年9月公開