素晴らしいの一言。
あれ?と思ったのが、以前よりもBCJ全体の音量が大きくて、繊細さよりも劇的さが優位になったこと。
特に第二群の低音部。
ただ、木管やオルガンも良く聞こえて、やっぱりBCJ。凄いなあ。
他方、歌唱は全体に発音のメリハリが柔らかくなっていました。
昨年聴いた優人先生寄り、だけど激しい。
以前なら強く発音した10番の"Gebunden in dr Hoell. Die Geissen und die Banden”(ウムラウト略)、ゲッセマネでのイエスの怒り(24、26番)、28番の”gegriffen"、寝て怒られた後の弟子たちの返事(17番)などは、他よりはっきりした発音だけど以前ほどでない。
昨年までかなり目立っていた"Du bist nicht ein Suender"や憎々しげな”Gegrusset seist du, Juedenkoenig!"、”Dies ist Jesus:, der Juengen Koenig"、”Ich bin Gottes Sohn”、あるいはSpot, Schmerzなどもそれほどでない。
逆に弱々しかったゲッセマネでのイエスの"betrube"、ペテロの”weintet bitterlich”も前ほどではない。
全体に語りというより音楽的で、パンフレットみてドイツ語追っかけるの、もういいかなあという感じでした。
ただ、ピラトの尋問の時の”Du sagests”や”Eli, Eli・・”は力強くて、男前なイエスでした。
なかなか見ない日本人のエヴァンゲリストを歌い切った吉田志門さん、素晴らしかったです。
19-20番では、寺神戸さんが腕組みして「お手並み拝見」な感じで見守っているのが、少しおかしかったです。
前半は少し不安定だった、ソプラノのハナ・ブラシコヴァさん、アルトのマリアンネ・ベアーテ・キーラントさん。
お二人が揃う27番や、第二部のアリアはどれも素晴らしかった。
特にキーラントさんの「憐れみたまえ」、このアリアで初めて感動しました。
少し濁りがあるというか、アルト特有のあれがない(語彙力なし)、とても澄んだお声で、これって母性の曲なのねと、初めて分かった気がしました。
テノールⅡの櫻田さんのアリアも美しかったですし、加耒さんもいつの通りnobleなお声でした。
皆さん、立ち位置が面白く、ソプラノは一番奥、アルトはちょい手前、男性陣はオケより前でした。
第一曲(第一部最後のコラールも?)のソプラノ・リピエーノ、お一人(?私の席から見えず)だったようで、望月万里亜さんが真ん中奥で活躍なさっていました。
とても小柄でピションの真似か?と思ったり(ピションは一曲目のソプラノ・リピエーノを小柄なソプラノさんで揃えて”少年のような”歌声を再現していたので)。
いいなあと思ったのだけど、最後の「御褒美で一人で立たせてもらう」がなくてお気の毒。私個人から大拍手で。
オケは、注目のガンバ(福澤さん)、57番のアリアは大満足でした。
オーボエ/オーボエ・ダ・カッチャ(三宮さんや新井さん)も力強かった。
面白かったのが、52番のアリアでブラシコヴァさんが体を揺らしながら聴いていらしたこと。
このアリア(アルトだけど)お好きなのでしょうか。
私が好きな65番。
ヨッヘン・クプファーさんは確信をもったような歌い方で感動的でした。
いつも通り、前田りり子さんも体を揺らしていました。
今回のマタイは、65番が終わってからなんだかじわーっと泣けてきて、なんでしょう。
いつも思うけど、実演で聴くと、ホントにあったという間なんだよなあ。
BCJ第166回定期演奏会 マタイ受難曲 2025年4月18日 於・東京オペラシティ