私は何かを考えるとき、図形を想い浮かるので、興味があって購入。

 

 

 そもそも、私たちは幼い時、視覚で記憶しているらしい。

 しかし成長と共に、言葉の記憶でそれらは覆い隠されるという(p23 Hitch,G.1989)

 

 グランディンさんは3つのタイプを提示する。

言語思考タイプ:概念を用いて内言して考える。言語活動はもちろんファイリングも得意。時間感覚に優れている(p21)

 視覚思考タイプは2つに分かれる。

物体視覚思考タイプ:写真のように世界をみる(p40)が想像も得意。機械好き(p168)。代数が苦手(p76 幾何学が得意)

職業では、画家、設計士、建築家、(意外なことに)商売人などが多い(p40)。美と機能性をわける傾向がある(p134)。 

空間視覚思考タイプ:パターンで世界をみる(p40)。数学を好む(p168 こっちは代数?)

職業では、統計学者や科学者などが多く(p40)、美と機能性は関連すると考える傾向がある(p134)

 視覚思考者はパターン認識が得意なので、サイバーセキュリティ―や大規模データ解析に向いている(p123-124)

 

 以上から、たとえば言語思考の営業担当は、製造が安定し収益をあがることが第一で、倫理的問題も法的に考える。一方、視覚思考の技術者は、工場がうまく機能することが優先で、製造物により消費者が怪我をすることが目に浮かぶ(p156ー157)

 これらの違いがかみ合えば創造的コラボ、そうでないと葛藤になる。

 実際、エッフェル塔建築で、建築家(物体視覚思考)は芸術性を優先し、建築エンジニア(空間視覚思考)は風圧や雪の重さなどを具体的に計算して建築を考え、色々ともめたらしい(p129)

 

 また、視覚思考者はシンプルな解決法を思いつく傾向があるという。

 指先を失った人をどうサポートするか。

 理屈(言語思考?)では義手などを考えるが、視覚思考者は、結束バンドやフックを身の回りのものにつけるなど、具体的方法を思いつく(p160)

 

 さらに視覚思考者はリスクを視覚化できる(赤ちゃんの有名な視覚断崖実験はまさに「危険が見えている」p198、263)

 言語はものごとを抽象化するので、危険がみえにくくなるとグランディンは主張する(p232 まさに「百聞は一見に如かず」)

 

 

 本書でははっきりと書かれていないが、ASDと視覚思考を結び付けているようにも読める。

 ASD的な人はデータベースとして(視覚)情報が蓄積されていくと成熟できる

 いい例がビル・ゲイツで、情報が分類処理され、柔軟に考えられるようになるから(p179)

 言葉記憶の蓄積は限界があるが、視覚的語彙は増え続けるという(p218 視覚情報の蓄積で「危険が見え」、リスク回避できた例が紹介されている)

 

 グランディンさんは、(多くは視覚思考の)技術者を養成する職業訓練校が重要だと指摘し(p103)、言語の扱いが苦手な彼らに、十分な指導と体験させることが大事だと述べている(p167)

 

 とても重要な提言だと思う。

 

 

 

 備忘録。

 ブローカ野は仕草や表情、身振りにも関わる(p32 運動野だから当然か)

 Disklesiaは右脳前頭葉機能の過剰(p172 引用なし)。 

 ASDの子どもとパペットでコミュニケーションをとるといい(p86)

 DonaldsonのPiagetへの反論論文(1979)。Piagetの実験をヌイグルミに対象を変えて物語を補足したら、反対の結果がでた(p78)

 条件で結果が変るという研究方法への戒めになるし、人間に”純粋な認識”はなく、文脈を交えて認識することを意味している。

 中脳水道灰白質は意識のハブ(p241 もう一つが視床)

 前頭葉と小脳は意識と関係ない(なくても意識はある p243)

 

 

 思いつきメモ:

 ASDの観念性はSZDっぽい。しかし視覚優位で具体的ならZYDっぽい。一方、ASDは一般に言語優位。

 ASDとZYDの関係は??

 

 

 

Grandin, T: Visual Thinking. Carlson & Lerner, N.Y., 2022  中尾ゆかり訳 NHK出版、東京、2023