チケットを買っていたことを忘れていて、スヌーズ機能でオンラインチケットが出てきて、「あ?買っていたっけ」。
5時間のオペラはしんどい・・・でもチケット高かったし・・・1か月以上前の私は元気だったみたいです。
花見客だかなんだかで激混みの上野駅の公園口から文化会館へ。
文化会館の中も混んでいて、期待も高まるというものです。
席はほぼ満席・・なんだけど、なぜか1階奥は空席が(私は3階右側)。
演奏。
曖昧な雰囲気の、しかし厳かな聖餐のテーマが静かに始まり、姿勢を正して聴いていたのですが、ワーグナー特有の徐々に情熱が湧き上がるような箇所になると、一気に雰囲気が変わりました。
N響のコントラバス・チェロ。ものすごい音圧で地響きのよう。
はっきりと聞こえる木管、うるさくならない金管。
しゃべっているようにアクセントが細やかなヴァオリン・ヴィオラ。
これはとんでもないものを聴かされていると、ひたすら圧倒されました。
一番好きな第一幕の場面転換からの合唱には、体が震えるような感動が。
「天からの歌声(内容的に)」は後方最上階、地上の声は舞台。
それらが対話するように掛け合うところは、本当に教会の中にでもいるようで、ああいう時って自然に視線が上にいくんですね。文化会館の天井をじーっと眺めながら聴いていました。
安定したゲルハーレルさん(アンフォルタス)。
ワーグナーのオペラの女性役は、たいていキンキン声になるのであまり好まないのですが、そうならなかったバウムガルトナーさん(クンドリ)。
グルネマンツのタレク・ナズミさん。Lass mich sterben!と苦悩し自棄的な雰囲気がよかった。
聖なる愚か者のスケルトンさんは、テノールにしては重めの声質で素晴らしかった。
騎士だから、やっぱり重厚な感じがほしい。
演奏会形式なので演技は最小限ですが、前半の「え、白鳥殺してダメ?」ときょとんとしている感じと、女性の誘惑を退け、<漢>パルジファルになった後の堂々とした雰囲気の違いも結構いいなと思いました。
私の坐った角度だとヤノフスキさんの指示が良く見えたのですが、とにかく木管群を煽っていました。
あれは何かな。第三幕は逆でした。抑えろと。
しかし、ずっと立ったままの指揮。
とんでもない体力気力です。
座っている私のほうがぐったり。
演奏、歌手、合唱、指揮、どれも非のうちどころがない。
あるとすれば、長すぎるだけ(それはワーグナーの責任)。
凄かったなあ。
この数年で一番の名演だと思いました。
どうでもいいことを一つ。
残念なのがフライング拍手でした。
よく余韻がどうのこうのという話になりますが、私の場合、素晴らしい演奏の時は過集中気味になっていて、終わると「ふーっ」と背もたれに体を沈み込ませたくなります。
だから突然ぱちぱちとやられるとビクっとするし、強引に現実に引き戻された感じがして本当に残念です。
余韻ではないんですよね。集中を暴力的に切られる(同じことかな?)。
ちなみに私のお近くの方がフライング拍手されていました。
てか、あんな演奏聴かされて終わった瞬間、よく体が動くなと、そっちが驚きでしたが。
元気な方だなと感心しました(嫌味)。
東京・春・音楽祭2025 パルジファル NHK交響楽団+マレク・ヤノフスキ指揮 2025年3月30日 於・上野