最近、テレビでもネットでも雑誌でも拝見する筑波大の柳沢先生の講演会を拝聴。
やっぱり面白かった。
備忘録
ずっと疑問だった、抗精神病薬が側坐核のD2受容体をブロックしている意義について。
側坐核は快や動機づけに関連しているとされる。
ここをブロックしたらやる気や快がなくなるじゃないと不思議だった。
柳沢先生によると、側坐核のD2受容体が覚醒度を調整しているという。
側坐核のD2受容体をブロックするとアデノシンが低下し眠くなるらしい。
なるほど!
総合失調症のhyperarousal仮説に対して抗精神病薬が効果を発揮する理由はこれだったのである。
かつてはThalamusのfilter仮説なんてのもあったのだが。
そうなると、夜間せん妄に抗精神病薬が有効な理由もわかる。
今まではノルアドレナリンα1拮抗作用による鎮静によるのだろうと思っていたが、それだけでなく、側坐核へのドパミン拮抗作用で眠気が生じることも影響しているのかもしれない。
とはいえ、ドパミン拮抗作用によるサブスタンスP低下による咳嗽反射低下や、錐体外路症状としての寡動や遅発性ジスキネジアで誤嚥が生じるかもしれず、諸刃の剣なのは変わりない。
さらに心臓への影響を考えると、やはりα2刺激薬のデクスメデトミジンのほうが使いやすい。
それから偏桃体に対してドパミンが作用してnonREMからREMへのスイッチングが起きるのだという。
これにもD2受容体が関連しているらしく、こうなると抗精神病薬ではREMのスイッチングがうまくいかなくなり睡眠の質に影響する可能性がでてくる。
とはいえ、このお話は薬の使い方のヒントになった。
もう一つなるほどと思ったのが、GABA系を刺激するのは睡眠でなぜダメなのか。
話がややこしかったので結論だけまとめると、脳全体の神経細胞のactivityを抑えるので徐派が減るからだろうとのこと。
で、ああ!と思ったのが薬物速波。
若い時から不思議だったのが、BZDを使うと「ぼーっとする」「眠い」と皆さんおっしゃるのに、なぜ脳波がβ域になるかだった。
柳沢先生のお話を私なりに応用すると、(たぶん)脳波の周波数をregulationする機能が低下して(?)、眠る際には徐派が減り、日中覚醒時は相対的に周波数が速くなるということかもしれない。
個人的に知りたかったのが、疲労と眠気の関係。
疲労は中枢神経系の炎症とされている。
これとオレキシンやアデノシン分泌とは、どう関連しているのだろう。
運動して疲れているはずなのに眠れず、却ってしんどいという方がいた。
この方を拝見して、必ずしも運動して疲れると眠くなるという単純なものではないのではと私は考えている。
こんなに現場とつながりが密接な基礎研究はあまりないと思う。
本当に面白かった。