プロティノスをベルクソンは大変に重視している。

 田辺は書簡集で、プロティノスを通してハイデガーを読み直したいと書いていた。

 

 

 第十一講 1903年2月20日

 魂のうちに肉体がある(肉体のうちに魂があるのではない)

 魂が物質化しつつあるものが肉体。

 (イデアの減弱したものが魂で、さらに減弱して物質化して肉体が生成される?)

 

 また、意識についてプロティノスは、イデアが分裂・二重化したものと考えた。

 ベルクソンの表現だと「意識のほうがイデアの一つの様態」(p192)

 (意識の中に概念がある ⇔ イデアの一種として意識がある)

 プラトンと逆に、プロティノスはもろもろの個体的イデアがあり、叡智界で個体は一つのイデアで表現されると考えた。

 また、時間空間(意識)の中でイメージを浮かべたとして、イデアには時間空間を抜け出して向かうので、イデアは意識されない。

 

 

 第十二講 1903年2月27日

 意識とは

 1)魂の随伴現象

 2)宇宙霊魂(全体霊魂ともプロティノスは呼ぶ。意識はない)と共感的一致、共振する。

 3)イデアの分割(意識されないイデアが、多様に分割されて意識が生まれる)

 

 

 第十三講 1903年3月13日

 一者=叡智的なもの(光)は相互浸透/相互の折り込みimplicationをしている

     ↓ 落下、減縮、模倣:不完全をもたらす、展開progresでもある

 相互の広げexplication、外在化、分離する方向へ:実在、物質性、似姿としての肉体

 

 しかし、魂が独立して思うように振舞えるというのは錯覚

 → 上昇する方向へ(緊縮resserree):全体であり続けたいという意志、プロティノスは「生きんとする意志(le vouloir-vivre)」と呼ぶ 

 

  一者

  ↓ 減縮affaibli, diminution、模倣

 可知、ヌース、知性(可知的なものに潜在する魂=落ち着きのない本性)=無時間、不動の動として運動

  ↓ 縮減、模倣

 「魂は自らを時間的なものにした」:永遠の模倣として時間が生まれる

 時間とは魂がある顕現から別の顕現へと移動する運動の生

 時間:魂の展開・繰り広げそのもの 「時間とは魂そのものp220

  ↓ 減縮、模倣

 宇宙霊魂:物質界を生み出す。

 

 ゾーエー:生命の進展  ⇔  ビオス:ある規定された行為、ある進展 p225 木村敏先生!?

 

 

 第十四講 1903年3月20日

 プロティノスは、一者や知性から時間を産みだすために躍動elanを導入した。

 難問。自由とは?

 (本書を読みたかったのはここを理解したかったから)

 

 私が熟慮し選択しなければならない時、自我のうちで意識が強くなる。

 習慣的、自動的な行動では意識は縮減する。

 意識の強度が強いほど、自由があると理解される。

 よーく考えている時は自意識が強く働き習慣的ではない。そうすると”自ず”と自由があると分かる。

 

 自由行為は必ず理由があるので、先行事象によって事後的に説明可能である。

 では、先行事象によって行為は予見できるか?

 そうではない。

 先行事象は時間を逆行して事後的にある行為の理由として説明できるが、順行して説明はできない。

 先行事象は出来事を明確に決定するには不十分だからである。

 

 人は熟考し躊躇する=時間・持続がある(躊躇は時間を要する)

 もし自由がなく全てが決定済みなら、持続(時間)はない。

 なぜなら、速やかにことが一挙になされるはずだから

  

 自由とは運動、行動の創造である。

 自由は行動のうちでなく思惟と関係する。自由とは魂そのもの(p246)

 

 (つづく)