日仏会館は文系も理系もなくて素晴らしい。
お1人目:高橋先生
外胚葉が神経管を作った後、背側に神経堤細胞ができる(らしい。習ったかもしれないが覚えてない)。
これが移動する!
いきなり面白い。
そして末梢神経や色素細胞になるという。
ところで腸はなぜ蠕動運動するか?
カハール(あのカハール)介在細胞がペースメーカーになり、堤細胞から分化した腸神経が腸管を動かしているから。
では腸神経がないと腸はとまるか?
むしろバラバラに動いてしまう!
麻痺性イレウスやIBSの機序のヒントになりそう。
また、ペースメーカーをもつ細胞は融合すると共振する。
細胞、臓器、人、集団とサイズが変わっても本質が同じだとすると、リズムの共振とは・・・・
発生学は面白い!
2人目:尾藤先生
短期記憶から長期記憶への固定、記憶痕跡形成にはArc蛋白による神経可塑性が関係している。
Arc蛋白、統合失調症が関連しているらしい。
3人目:有薗先生
アストロサイトのご研究。
アストロサイトの役割は神経細胞への栄養補充と構造支持程度で、何をしているか謎とされた(と私は習った)。
しかし、自然が無駄なものをつくるわけがないし、絶対、何か大事なことをしているはずだ、研究者になることを選んだらこれを研究したいと学生時代に思っていた。
同じグリア細胞でもミクログリアは私の業界では「流行り」だが、アストロサイトは注目されていないと思う。
流行りもの嫌いの私は、誇りをもって楽しく仕事をしていたに違いない。
有薗先生によると、Tau蛋白の回収、記憶や睡眠との関連性などが明らかになってきたという。
ご発表はアストロサイトの構造についてが主で、まだ分からないことが多いという。
やりたかったなあ。
ただ書いているうちに気付いたが、ご研究はイメージング技術の進歩が前提で、スライドに引用される論文の発表年が2010年以後。
つまり、ここ10年で可能になったご研究かもしれない。
だとすると、私の卒業年ではダメか。
面白かったのがマクロファージが移動する動画。
通常は対象物を染色するが、近年は背景の構造物も可視化される。
提示された動画だと、マクロファージ自身が移動しているというより周囲の構造物が動いて、マクロファージは”動かされている”ように見える。
これも面白い!
4人目:隅元先生
有薗先生のご研究で大事だったイメージングのお話。
大脳構造の可視化。
興味深かったのが大脳が大きいのは哺乳類と鳥類だけだという。
なぜだろう。
また、文字通り切り口をかえると動きが全く異なってみえる(ランダムだと思っていが方向性があった)というのは、大変に教訓的。
最後は松尾先生
アミロイド線維がテーマ。
私の仕事と関係させると、アミロイドβ蛋白が集まってオリゴマー、さらに線維、そしてシートになって老人班を作る。
これまでアミロイド線維に毒性があるとされたが、最近はオリゴマーが毒性をもつとされている(と仕事中に耳学問で知った)。
が、現在の最前線では線維も見直されているという。
では、どうして線維が毒性を持つのかというお話。
要は”揺らぎ”の大きさだという。
”揺らぎ”は、松尾先生の話でもっとも面白かった点。
高分子は”揺らいでいる”(”柔らかい”とも表現するらしい。熱で構造を微妙に変える)のだという。
そして結合性や機能発現と関係するらしい。
分子は単なる塊でなく”揺らい”でいる。
サイズが違うが、硬くみえる私達の体も微細なレベルで揺らいでいる!
物の見方が変わる刺激的なシンポジウムだった。
一番最後の高橋先生のお話も素晴らしかった。
”Science誌の衝撃”を考えると、若い方々に頑張ってほしいなあ、ってエラそうだけけど。
日仏会館100周年シンポジウム「形と機能からみた生命科学の最先端―日仏交流の成果」 1月21日 於・日仏会館