これまた面白くて、出張先で泊まったホテルと、帰りの新幹線で読み終わった。

 

 

 もう少し若かったら、この方法を本格的に勉強したかもしれないという思いと、若い頃はこの方法の良さが分からなかっただろうから、この本に出会っても勉強しなかっただろうなという思いで、複雑な気持ちに。

 

 

 内面をいじくるような、「蓋は開ける」ような、余計なことをしない。

 過去を詮索しない。したがってあまり意味のない原因探しをしない。

 考え方を変えることでもない。

 行動を変えることでもない。

 逆に、考え方や行動を変えないように指示することでもない。

 みんなでぞろぞろ集まって、なんだか人工的なルールで対話することでもない。

 そもそも言葉で勝負しない。

 

 

 感情をしっかりと体験すること。

 それも身体的な意味も含めた感情。

 なのでフェルト・センスに似ている方法でもある。

 

 ただし、受ける側にそこそこのセンスがないと、うまくいかない方法ではないかという気がするが、それも治療者の腕次第なのかもしれない。

 

 

 以下、なるほどと思った点だけ。

アタッチメント体験は人生が続く限り同じように重要(p28)
感情は環境と自己との仲介であり、意欲、判断や決断の源(p46)
ネガティブな感情は生存のための短期的防御機能、ポジティブな感情は対人的・身体的・心理的リソースの発展促進という中長期的に意味をもつ機能(p62-63)

 

 今の自分にはぱっと出来ない技法。

「きっと、そのような部分があったのは理由があるのでしょう。無理もないことかもしれません」と伝える。(p122-123)
感情を体験することを妨げる働きが内面にあるのは、それなりの理由があるだろうこと、そして現在は不要になっているだろうことを示唆する。神田橋先生も似たことを言っていた。
「落ち着いてきました」と言われたとき、「ではどのようなことか話してください」ではなく、「落ち着いた感じに注目しましょう」と誘う(p138-139)
 言語化ではなく感情を味わうことを重視する。
「さっきと違います」と言われたら「どんな風に違いますか」と尋ねるのではなく、「どんな感じですか?」「その感覚をしっかりと感じてください」と伝える。(p140)
 今の私なら「どう違いますか?」と絶対に尋ねてしまう。
 とにかく体験優先で、言語化することは重要ではないという点で一貫している。

 

 

 

 ちょっと残念なのがタイトルとカバー。

 「癒す」(という、私の感覚では、怪しい言葉)や「あなたのカウンセリングがみるみる変わる」(という、私の感覚では、煽り文句)は不要ではないかと思う。

 とはいえ、「なんとかセラピー」ではなく「実践メソッド」なのは素晴らしいと思う。

 もし「セラピー」という言葉がついていたら、「またなんとかセラピー?もういいよ」と、私は本書を手に取らなかったと思う。

 

 

 あとヤスパースの真正性とつながる記述があって、ちょっと嬉しい。

 

 

 

花川ゆう子:感情を癒す実践メソッド 金剛出版、東京、2020