想起について考えようと思ってベルクソンを読み始めて挫折。

 脳科学の本に逃亡。

 以下、復習も兼ねてメモ。

 

 

 感覚 → 視床 → 感覚野 → 連合野 → 海馬 → 皮質のあちこち

         → 辺縁系 →   (インデックスをつける)

        (情報の重みづけ)     

 

 手続き記憶:小脳・基底核(海馬は関わらない)

 

 エピソード記憶:生存に関わる/インデックスが多いの忘れにくい

 意味記憶:インデックスが少ないことが多いので、忘れやすい

 

 情動:すぐ出現し短時間持続 身体反応を伴う(自律N反応・行動として表出)

 気分:持続 はっきりと言葉にならない

 

 情動:信号になって本能的な決定された行動から解放された。

    状況に応じた反応ができる。ただし強力なのでコントロールできない

 

 側坐核:快の情動

 ドパミン:記憶増強と関係

 

 強い恐怖体験の記憶は断片化:

  生命の危険のある時は素早く行動しなければならない

  隅々まで記憶すると間に合わない。

  生存にとって必要なところだけを覚えようとした名残り

 

 基底核:欲求(食・性・生)、絆形成、習慣形成

 

 睡眠中の脳の活動

  辺縁系 10-20%↑(眠っている方が活動している!)

  前頭前野 25%↓

  視覚連合野 REMで5-10%↓

 

 夢:短期記憶の選別と長期記憶の固定化 WMを使う(記憶の関連比較)

 (睡眠中だと新たな知覚入力が遮断される。前頭葉機能低下で抑制↓で様々な断片が賦活される)

 

 睡眠深度と記憶の種類

  REM:エピソード記憶

  stageⅡ:手続き記憶

  stageⅢ・Ⅳ:意味記憶

 

 興奮系神経細胞:錐体細胞

 抑制系:バスケット細胞、シャンデリア細胞、ダブルブーケ細胞・・・・

 

 周辺抑制:

  神経細胞ネットワークが切り替わる際、周辺の神経細胞をいったん抑制する

  → 情報伝達が早くなる

 

 検索誘導性忘却:

  間違ったことを思い出すと類似した記憶のネットワークが周辺抑制される。

  思い出そうと努力すればするほど(=神経細胞が興奮すると)周辺抑制も強まる。

  → 想起の努力をやめると、周辺抑制が解除されて正しいことを想起しやすい

 

 記憶は類型化、カテゴリー化されている

 

 GABA受容体が多い:前頭前野>ほかの新皮質>海馬>脳幹

 ヒトもサルも、胎生期はGABA受容体が基底核原基にあり、皮質・海馬に移動

 ヒトだけ視床にも移動する

 (2001年の研究 ヒトらしさは抑制系に関係しているかもしれない)

 

 アストロサイト:栄養供給だけでなく、Na+イオンのくみ出しをする(発火の準備)

 ミクログリア:免疫だけでなく不要なスパインを刈り込んでいる

 

 記憶の劣化:記憶自体、記憶のインデックスの劣化

 → ヒントで「あ!」は、記憶自体は無傷で、インデックスの劣化

 

 想起するたびにデータを構成しているので、想起の度に変化する可能性がある

 

 フラッシュバルブ記憶:重大なことはフラッシュのように鮮明に記憶する

 → ただし中核の記憶以外の周辺情報は変容してしまう

 

 記憶の干渉

  順向:古い記憶が新しい記憶に影響(プライミング)

       午前に同じショッピングモールの駐車場に止めたので、午後にどこに止めたか忘れた

  逆向:新しい記憶が古い記憶に影響

     新しい単語を覚えたので、前に覚えた似た単語を忘れた

     (勉強は同じ内容をだらだらしないほうがいい!)

 

 構成主義的情動理論(バレット)

  快と不快の強弱だけ。

  例:”すごく不快”(強さ)+概念+状況(誰かに追われているなど)

    → 「恐怖」と名付けたり、「不安」と名付けたりする

 

 神経細胞死の主な原因は虚血

 

 マルチタスクをやめた方が、脳のポテンシャルはあがる

 

 記憶は変容したり干渉したり劣化したりして意外に正確ではない

 そのために、行動に柔軟性や適応性が出てくる

 

 

<感想のようなもの>

 視床の抑制系が大事というのはsalience仮説につながるので面白い。

 周辺抑制も、あるネットワークを浮き上がらせる方法として秀逸。人間の身体はよくできている。 

 「情動が2種類しかなくて、概念構成しているのでは」というのも面白い。

 量の変化=質の変化は、まさにベルクソンのテーマ。

 

 しかしマルチタスクしない方が脳に負担をかけないのなら、ASDの方が良い脳の使い方をしているともいえる(負担をかけられないともいえるが)

 

 

 

澤田誠「思い出せない脳」 講談社現代新書、東京、2023