なんだか気に入った詩
夜にして海べにたてば
夜にして海べにたてば よる波の音のよきかな
天つちはさながら鼓 闇をゆする谺にかへす
ちよろづの星くづは 空とぶ鶴むらかも
いしたふや天はせ使 ひたはするわが思ひ
人は生れ人は死す 神もなどか滅びざらん
人は生れ人は死す 道もなどかうつらざらん
いつはりを思ひ棄つれば 人の世は沙漠のごとし
とことはにいにしへいまに たえせぬは流転のすがた
興ざめかもしれないけれど、どうしてもやりたくなる。
「人は生れ人は死す」の行までの、母音や子音の並びの分析。
よ・・・う・・・ よ・・お・・よ・・・
”あめ・つ”・・つ や・・ゆ・・・・・・
ち・・・・・・・ ・・・・・つ・・・・
い・・”あめ・つ”
子音YやTの繰り返し、そこに母音A、I、U、Oが複雑に組み合わさる。
それから、”あめ・つ”の対称的な位置。
足元の海、美しい音を聞きながら、夜空に視点を移し、星や鶴の群れをみる。
流れ星を見て何か思う、または、天駆ける「使」とともに「思い」がほとばしる。
その後、突然、抽象的な世界に転じる。
「とことはにいにしへいまに」の音の並びが、なんだかかっこいい。
漢字なら「常、永遠に、古、今に」
勘助の短歌
あまりに素朴な感じがして、良し悪しが私にはわからない。
あめつちを ひた恋ひすれば わが宿の
葎(むぐら)の花も たふとかりけり
なんというか、そうですか・・・・という感想。
思春期をいい加減抜けようよというのが
たづぬれど 神も仏もなかりけり 堕ちゆく闇の そこひしらずも
鈴の音は 神も悪鬼もなかりけり 土が鳴るなる うづまさの鈴
バカにしてるの?なのが
わびぬれば 今はかくべき願もなし 棚の達磨よ 目をあきたまへ
朝朝に ゆゆと屎(くそ)ひる楽みを ななの宝に われかへめやも
畑がへり 大根しよひゆく妹が 屁のはしくもあるか 鄙にしあれば
「やも」は、どうしようかな・・・いや、しない、という詠嘆らしい。
「はし」は、可愛らしいという意味らしい。
「鄙」は田舎。
おお、なんか短歌っぽいなあというのが
はたおりの 峡はうつくし月潮に 蓮の舟うけ 帰りこせ君
例によって勝手に解釈。
上の句は、はたおりの峡、峡はうつくし、うつくし月、月潮に、とそれぞれの字が繋いでいるのではないかと思う、たぶん。
で、下の句は素直に、蓮の舟浮け、帰りこせ君、と一気に読むのかなと。
渓谷に流れる美しい川。月も輝いている。川はやがて海につながる。
あの蓮の花は海に浮いているだろうか。
また眺めたい、戻っておいで・・・という歌かなと。
完全に妄想。
確かに”短歌らしい”けれど、私はピンとこない。
やっぱり勘助は詩なのかなと思う。
中勘助「詩集」 岩波文庫、東京