非常勤の職場から、頑張って仕事を早く終わらせて参加。
いつも「ながら聴き」するだけで、F. クープランの個性や作品の特徴などをちゃんと調べたことがなく、改めて知りたいと思って会場へ。
無知なのでまず驚いたのが、クラブサンはフレンチ・ピッチという普通より低めの音調なのだそう(390Hzくらい)。
会場にあったのはフレンチ・スタイルのチェンバロというかクラブサンで、普通のピッチとフレンチ・ピッチに切り替えられるものだった。
講師の桒形先生が、実際に音を出して比較してくださった。
確かに、特に低音の深みが違った。
クープランの人物像で面白かったのが、楽譜改革をした人だったということ。
それまで横長で上下の音符の位置が揃っていなかった譜面を、縦長にして(情報量が増えてページをめくる回数が減るらしい)、職人たちを教育して音符の位置が正確に印刷されるようにした。
彼が改革する前の時代、たとえば叔父ルイの楽譜はとんでもない記譜で、「これ、クセナキスの楽譜」といわれても、「うわー、あるあるー」と答えてしまいそう(下図)。
リュートの記譜法に準じていたらしい
クープランはイタリアに憧れていたらしく、組曲をイタリア風にordreと表記し、晩年は彼が敬愛するイタリア音楽の匠コレッリと、フランス音楽の祖リュリに捧げる曲を作った。
もっともリュリは、もともとイタリア人だが。
クープランの曲のタイトルが「蠅」「鰻」「中国人」など、訳のわからないものが多いことは有名だが、本人は「自分の曲を聴けば、タイトルの理由はわかるはずだから説明しない」と断言したという。
「蝶」はパタパタしているような、していないような。
でも、どこかに飛んでいってしまうというより、行ったり来たりしているように感じる(私は)。
桒形先生によれば、当時、踊子の髪飾りを「蝶papillon」と呼んでいたそうで、それに掛けているらしい。
踊りだといわれれば「行ったり来たり」でもいいような・・・・
というか、クープラン先生、やっぱりわかんないよ。
有名な「神秘のバリケード」。これはスカートのことという説があるらしい。
クジラの骨を使ったこれ。
Wikipedeiaより
私が知らなかった(あるいはながら聴きで気がついていなかった)曲で、いいなあと思ったのがこれ。
「ケルビムたちまたは愛想のいいラズュール」(Youtubeにピアノ版しかなくて残念)
途中で長調に転調するので、びっくりした。
先生によれば、クープランは短→長または長→短に転調する曲を多く書いたという。
ほかに前半までジークで途中からアルマンドになるなど、テンポが変わる曲も多いらしい。
かっこいい。
ただ基本的に6/8拍子の曲が多いのだそうだ。
「クラブサン奏法」についての解説もあった。
面白かったのが、レガートを意識した運指を書いていること。
クラブサンでレガート!
私にとって、クープランというとこれ。
唯一もっているレオンハルト演奏のCDでながら聴きをしている時、ちょうど作業の集中力が切れて音楽の方に耳がいくタイミングで、これが流れる(どういう理由だろう)。
いい曲だなあといつも思う。
改めてタイトル見ると、思春期かあ。
意味深だなあ。
日仏会館レクチャーコンサート「クラブサンを愛した大クープランの音楽」
講師:桒形亜樹子
日仏会館 2023年6月