タイトルで衝動買い。
何がしかの問題行動がある場合、原因探しなどせず、それに代わる行動を探す方法がある。
うまくいく場合もあったが、うまく行かないこともあった。
そのコツをまとめたのが本書で、なるほど、私がへたくそだった理由がわかった。
心理教育はよく行うが、それだけで終わらせてはならない、というか、終わらせるのはもったいない。
なぜなら、よく言われるように「知識は人に教えることができて初めて使いものになる」から。
だから、こちらが説明した後、今度は「患者自身が学んだ話を、治療者に説明」してもらう。(p22)
こちらがお伝えしたことを、今度は患者さんから説明していただくことで、知識の理解と定着を確実にする。
なるほど、考えもしなかった。
明日からの参考にしたい。
本書全体で繰り返されるのは、具体的であること(p75-78、120、188、200、205など)。
感情調整なら、「何をするか」と同時に「どのように」「どこまで」行うかを話し合う(p27)。
ある行動で、どのような気持ちになるかを「実況中継のように再現してもらう」(p120、184、202-203)。
この方法だと、よく行う「そうするとどんな気持ちになるんですか」というやや抽象的な質問よりも、”どの時点で”、”どんなことが”、”どのような気持ち”を引き起こすか、具体的に把握できそう。
これも面白い。明日からやりたい。
また、代替行動で100%満足できない場合。
これはよくある臨床的な問題で、代替行動を提案しても「そんなことでは代わりにならない」と言われてしまうことは、臨床家なら一度や二度ならず経験していると思う。
その場合、無理に100%代わりにならなくてもいいと考える。
最初は10%満足、次いで20%満足、次いで30%満足・・・と、一部でもいいから代替できるものを探していく。
何だったら100%代替できなくてもいい。
問題行動さえ消えてしまえばいいのだから(p121)。
目から鱗が落ちた。
重要なこと。
行動変容を促すと「今までのことは無駄だったのか」と患者さんは考えかねない。
その場合、「それまでのやり方が間違っていたのではなく、そのときの問題や状況とあっていなかっただけで、場合によってはその方法が適当なこともあるだろう」と説明すると注にある(p44)。
こういう大切なことが注に書かれているので、本はきちんと読まないといけない。
これまでの私なら、「これまでのことは無駄ではないです。無駄なことなんて一つもないと私は思っています。前のやりかたが失敗だったとか無駄だったなどではなくて、試行錯誤で色々な方法を試している途中なのだと思ってください」と説明していた。
私にとって「生きていて、これまでやってきたことに、無駄なものなど一つもない」というのは真実なので、本気でそう言っていたのだが、どことなく説教くさい。
「たまたま、あなたの状況にあっていなかっただけ」で「状況が違っていたら、うまくいったかもしれない」の方が、患者さんに希望を持たせる気がする。
今後、こういう説明もできるように、頭の中でシミュレートしておきたい。
勉強しなければいけないこと、頭に入れておくべきことがまだまだある。
横光健吾、入江智也、田中恒彦編「代替行動の臨床実践ガイド」 北大路書房、東京、2022