最近、森鴎外と併行して読んでいるモーパッサン。
同時に仕事関連の本も乱読しているので、情緒がへんな塩梅です。
なんとなくモーパッサンの「癖」がわかってきました。
ノルマンディー地方が舞台であることが多く、パリが舞台でも誰かがル・アーヴル出身だったりする(モーパッサン自身がノルマンディ出身)。
ル・アーヴルといえばモネ。彼の描いたル・アーヴル港。
諦念と孤独にまつわる話が多い(私が読んだ短編集の訳者さんのセレクトは)。
彼自身のキャラなのか、出身地の影響か。
学生の時に加賀乙彦大先生の「フランドルの冬」を読み終わって陰鬱な気持ちになったのを思い出します。
今月のNHKフランス語会話(TV)は、ノルマンディー地方をとりあげるはず。
楽しみですが、どうせ晴れたシーンばっかりなんだろうなあ。
あと山田登世子先生(山田先生が何をセレクトしたかを知りたくて、わざわざ古本を入手)の御指摘、「水が多い」に納得。
短編「ラテン語問題」(「オルラ/オリーブ園」収載)。
当時、ラテン語教育を廃止すべきか否かが議論されていた。
訳注によれば、それを題材にした短編だそうです。
なんてない、晩年の短編。
初期特有のシニカルさ、オチもない(30歳でデビュー、43歳で死んでいるので、初期も後期もないと思いますが、一応)。
でも人情小噺みたいで、私は好きです。
読み終わってほっこりしました。
ラスト。
素直に読めば「ラテン語、いらないと思っている?」です。
でも、主人公はラテン語で有名な学校にわざわざ行った(行かされた)。
で、ラテン語の個人授業をわざわざ受けた(受けさせられた)。
そこで、あのようなことになったわけです。
さらにある場面で主人公はラテン語で独り言ちます。
つまりラテン語がしっかりと身についている。
(何を書いてるのだお前は、ですね。面白そうと思った方、ぜひどうぞ)
この物語では、確かにラテン語は「直接」何の役にも立ってない。
でも「間接的」に、ある人の幸福に役立っているのです。
そう!古典はこういう役立ち方をする!
・・というのがモーパッサン先生の主張です・・たぶん・・私の妄想か・・・
ところで私のお気に入りは山田先生セレクトの「みれん」「ミス・ハリエット」。
これは多分、おっさんにしか分からない特別な小説(言い換えると、女性が「キモっ!」と思う小説)。
でもいいのです。
100年超えて「だよねー。あるよねー、こういう気持ち。こういうこと」とモーパッサンと何かを共有できたので。
短編集Ⅲ
青柳瑞穂訳
新潮文庫
590円+税
ISBN 978-4-10-201408-0
傑作選
太田浩一訳
光文社古典新訳文庫
980円+税
ISBN 978-4-334-75431-0
960円+税
ISBN 978-4-334-75389-4
短編集
山田登世子訳
ちくま文庫
800円+税(古書 500円)
ISBN 978-4-480-42659-8
残酷短編集
鈴木暁、森佳子訳
1600円+税
ISBN 4-8166-0403-0