子供1が「お父さんが好きそうかなと思って。どう?」と一緒に見始めたアニメ。

 

 オープニングの戦闘シーンがかっちょよく、おお!これは!と見事に釣られるものの、萌えキャラクターの出現で脱落しかかり、しかし絶妙なタイミングで再度、戦闘シーンに。

 さらに設定を過剰に説明しない丸投げな脚本と演出にやられてしまい、現在に至っております。

 

 見事に子供1の術中に嵌りました。

 悔しい。

 

 本屋で毎回、「お父さん、あそこに、あの本棚に、原作があるよ」と悪魔のささやきが。

 色とりどりの背表紙の電撃文庫の並びに私はいつ入り込むのか。

 私のオタクとしての矜持、「電撃文庫は手に取らない」がついに破られる日が・・・(←どうでもいいですね。すいません)

 

 

 

 で、本作の粗筋。

 A国(仮)が突然、B国(仮)に宣戦布告。

 攻撃してきたのはA国開発の無人AI。

 一方のB国、兵器の無人化に失敗。

 人種差別で第86区(「区」という表現がうまい。いかにもゲットーを想起させます)に隔離され、人間扱いされていない人々が兵器を操縦し戦闘に駆り出されていた。

 B国軍人は直接には戦闘せずハンドラーとして(Handler?直訳は調教師!)、戦線から遠く離れた自国基地内の部屋で、なんとかという装置で戦っている86区民兵士と連絡しながら、画面上で作戦指揮するという設定。

 で、兵士はプロセッサー(processor?)と呼ばれており、IT用語的にはCPUのことだそうなので、人扱いされない彼らは兵器の中央制御装置扱いされているということのようです(たぶん)。

 なので、公的にはB国の兵器は無人(!)。

  

 

 もちろんナチスのユダヤ人問題が元ネタ。

 前回エピソードで、エライ将軍がさらりと言っていた台詞で、B国のアイコンになっている女性を殺したのがその人種ということになっていました。

 ベタなまでにイエスとユダヤ人の関係です。

 

 現実の方では「ユダヤ人部隊」は無かったはずですが、その代わり収容所で兵器の部品をつくらされていましたから、間接的に戦闘していたようなものです。

 

 さらに、戦闘兵器が無人で軍人はそれをコントロールしているだけって、今のドローンや無人爆撃機と同じ(アメリカ国内の空軍基地で操縦しているけど、戦場はアフガニスタン、みたいな)。

 「血のコスト」を支払わない戦争は何をもたらすかです(アニメでは軍紀が完全に乱れている)。

 

 

 私がさらにしびれたのが、原作未読なので間違っているかもしれませんが、戦場に敵国が開発したらしき蝶々みたいなメカが飛んでいて、どうも電波を攪乱しているらしい。

 だから、有線でのミサイル攻撃ができない(たぶん その2)。

 ガンダムでいうミノフスキー粒子。

 なのでガンダムと同じく装甲兵器で直接戦うしかない(たぶん その3)。

 だけど、なんとかという装置でハンドラーと戦場の兵士が通信(?)できるのが不思議だったのですが、設定的にもっと直接的なものらしい(けど、まだ不明。前回のエピソードで仄めかされていました。5月31日記)。

 

 あとガンダムつながりでハインラインの「宇宙の戦士」の敵がクモ形宇宙人という設定だったので、本作の兵器類がクモみたいなのは、それへのオマージュかなと思ったのですが、たぶん私の妄想です。

 にしても、クモ型宇宙人、地下に洞窟を張り巡らして「どこから出てくるか分からない」という設定で、露骨にベトナム戦争(か末期の日本軍)の比喩で、読んだ当時、中学生だった私でも不愉快でした。

 

  

兵器:ジャガーノート。脚は四本ですが動きはクモみたい。

(C)2020 安里アサト/KADOKAWA/Project-86

PRTIMESというプレスリリース素材を紹介しているHPからの転載。

 

 

 話を戻します。

 第二話あたりでさらっと説明されるのだけど、もしかするとA国はAI兵器に制圧されて、実は無人かもしれない(!)。

 これは「ターミネーター」の世界観の元ネタ(?)、フィリップ・K・ディックの名作「変種第二号」を想起させて私的にツボ。

 ちなみにこの短編は映画化されていますが、ご賢察の通りの出来なので、映画を見ずに原作をお読みになることをお勧めします。

 後味の悪さ、その絶望感が大変に素晴らしい名作です。
 

 

 前回のエピソードはよかった。

 これまで描かれていた主人公の女友達がお見合いしてはうまくいかないという、一見、どうでもいい逸話の理由が、実は大事な伏線であることが分かる。

 差別する側にもある自責感情。

 86区民にとって、唯一得られる自由は何か。

 出撃前の食事。

 こういったことに余計な説明的台詞が一切ありません。

 

 

 他にいろいろ丸投げが。

 弾薬などの補給用ロボットがちゃんといて、出撃時に一緒に動ているのだけど、その設定説明なし。

 若い軍人は健康そう(というよりひ弱)だけど、年長の軍人は古傷だらけで、昔のB国軍はちゃんと戦闘に参加していたのかもしれない。これも説明なし。

 B国の兵装が薄っぺらなのだけど、その理由も説明なし(見ていれば、理由は分かるけど)。

 

 

 ネットでは色々な御意見が。

 まま、「ライト」ノベルなので、ハードな設定をお望みなら、ヒューゴ賞かネビュラ賞受賞作のSFをお読みになればと思ったりします(←喧嘩を売っているのか?)。

 本作は「ヘビー」でも「シビア」でも「ハード」でもなく「ライト」だし。

 

 てか、あまり設定について突っ込むと、そもそも「歩行型戦闘機の中の操縦士は絶対に死んでいる」問題にひっかかります(横揺れ縦揺れがひどすぎて、操縦席はかなりサスペンションがきいているなどして無重力に近くないと、パイロットは肉塊になってしまう)。

 

 

 

 私が気になったのは3点だけ。

 

 萌え絵(?でいいのか?)は我慢するにしても、軍人さんは髪を短くしてほしい。せめて、ボブか後ろにまとめてほしい。

 あの髪型で軍帽は仮装(此頃の若人の皆様はコスプレと謂ふのでしたね。失礼ゐたしました)にしか見えません。

 軍人なら髪を切れ!髪を!(大人げない) 

eiga.comから転載

 

 あと元ネタ的にも軍服をドイツ軍寄りにしてほしかった。

 青と白主体の服装、19世紀のフランス軍みたいです。

 華美さを追求して戦闘に不向きなところは(当時のフランス軍服は戦場では目立ち過ぎて恰好の的になった)、設定的にはぴったりなのでしょうが。

 

 

 最後、青春万歳的なシーンはカットで(いい年して、リア充が嫌いなだけ)。

 もう少しカラッと演出した方が却って悲しくなるはずだし。

 

 

 あ、でも、あの主人公の女性指揮官が純粋を通り越して、もはや鈍感ではないかという、あれは何とかならんのでしょうか(結局、うるさい)。

 

 そもそも本作の設定、初めて見た時、ははーん、これで主人公が病んでいくのだなっと勘違いしてしまいました(今後、どうなるか不明)。

 自分が指揮している(または関わっている)人が死んでいく瞬間を音だけ(?なのか不明)聞いて、自分は何も出来ないって、並みの神経では耐えられないと思うのです。

 確かに兵士たちは「人扱い」されていないのですが、仮に「動物の断末魔」だってつらくないですか?

 まま、これをいうとこの話の根幹にかかわるので、そうそう「ライト」ですから、我慢我慢。

 

 それより、ためにためた苦悩を吐露した女友達に絶交までされてもまだピンと来てないのか、その後も「あの人たちを生きて帰らせたい」と悩んでいる(たぶん その4)。

 ええ?そっち?

 「それは私の自己満足ではないのか」

 「差別に加担しないとすれば、今のこの国でどのような方法がありえるのか」

 「差別する自国民を軽蔑するという形で私自身も差別してないか。差別意識はどう扱えばいいのか」

 とかじゃないの?という、そうでした、ライトノベルでしたね。すいません。

 面白いので、つい。

 

 というのも、86区側のもう一人の主人公「シン」君の設定やキャラクターがよくて。

 礼儀正しい影のある一匹狼キャラは大好きなので。もったいないなあ。

シン君です。こういう男になりたかったなあ(無理) 

(C)2020 安里アサト/KADOKAWA/Project-86

 

 上記HPから転載しました。

 

 というわけで、面白いのですが、雰囲気的に次回が最終回のようです。

 原作は何冊もありますが、私的にはこの雰囲気で終えていいけどなあと思います。

 

 でもなあ・・・・主人公が押井版の草薙素子みたいな雰囲気の絵だったら、本当にサイコーだったのだけどなあ(しつこい)。

 

 

 

 


 

安里アサト・作 KADOKAWA電撃文庫

石井俊匡・監督

(脚本不明)

「86-エイティシックス-」

TOKYO MX 2021年4月~(放映中)