ようやく緊急事態宣言解除。
久しぶりに「断捨離、断捨離」とCD棚を整理。
5-6年以上触ってないCDを売ろうと思っていたのですが、埋もれていたCDを次々に発見。
一昨年かいつだったか忘れたけど、来日公演なさったフィンランドの指揮者さんのCD。
サインまでもらっていたのに埋もれてました。
ハンヌ・リントゥさん。
来日時はシベリウス・チクルスで、全曲を聞くことができるという滅多にないチャンス。
あれこれ工夫して、強引に聞きに行きました。
素晴らしかった。
シベリウスで実演って、交響曲ならよくて5番か7番くらい、ほとんど2番かフィンランディアで、お願いだから他のを聞かせてくれなのですが、初めて実演で私の好きな3番、4番、6番を聞けて、大変に満足しました。
普段、私が聴いている4番のCDはケーゲル指揮で、出だしの音が何の楽器かわからないという色々な意味で空恐ろしい演奏ですが、実演で「ああ、ここチェロだったのか」「あれ、ここは音を抑えた金管だったのか」とすっきりしました。
逆にケーゲル盤がいかに恐ろしいか分かりました。
リントゥさんの演奏。
ひんやりして無時間な感じで、ああ、シベリウスというオーセンティックな演奏もいいのですが、この方の演奏は一味違いました。
かといって、イギリス系(全集をもっているアンソニー・ディビス、ジョン・バルビローリとか)とも違う。
さっそうとした指揮ぶりで、低音をがっしりと響かせる。
アクセントや強弱を結構つけるので、シベリウスらしくない、になりかねないのですが、不思議にそうならない。
私は、全7曲の交響曲を聴いている間、ずっと不思議でした。
Massiveな印象と、透明感が同居しています。
どうやったらこういうことができるのだろう?
無理やり言語化すると、私的に大事な点、まず「うるさくない」。特に金管。
でも、ここというところで、たとえばティンパニなどはガツンと打つ(連打でなく一打の時)。
アクセントをつけるけど全体のテンポはゆったりで、ちょこちょこ細かくいじっている感じがしない。
とはいえ、おそらくテンポをそこそこ揺らしている。
このCDなら、「トゥオネラの白鳥」は、聞き比べたベルグルンドより出だしは早いのに、全体の時間はほとんど同じです。緩急のつけ方がゆるやかなのでしょうか。
「レンミンカイネンの帰還」は、金管は颯爽としてかっこいいし、フーガもリズムが土着的な感じですごく面白い。
パーヴォ・ベルグルンドが、もう「何も余計なことをしない。ただただ美しくて、高貴」なのに比べると、うまく言えないけど「人間味のあるシベリウス」です。
あまり「自然」「北欧」に引きずられると描写音楽みたいになるので、ただただ無心に演奏していただくと、不協和音や不思議なリズム、音を混ぜようという意志を感じない信号のようなフレーズなどで、モダンな抽象音楽にも聞こえるところがシベリウスの好きなところですが、リントゥさんのアプローチ、私は初めてでした。
期待です。
てか、今年の5月来日予定だったのです。
絶対、行こうと思っていたのに(音友の「今年来日する指揮者」のページを破って机の前に貼って、丸つけていたんです・・・)、延期です。
ブルックナーやってくんないかな。
マーラーよりブルックナーがあっていると思うんだけどなあ。
ところで話題が変わるのですが、以前、フィンランドに行ったことは書きましたhttps://ameblo.jp/lecture12/entry-12540040232.html?frm=theme。
その時に、シベリウスの家に行ってきました。
愛妻アイノの名前を付けた家(アイノラ)で、列車で行ったら驚いたことにアイノラ駅、無人駅です。
案内板、小さいうえに草むらに隠れているし。
車をほとんど見かけない大きな車道の横の、草むらと森の道を延々と歩いて、おかげさまで大変に運動になりました。
てか、あの時スマホもってGoogle Mapさんに助けてもらわなければ、絶対、行き倒れていたことでしょう。
アイノラ、ひっそりとした静かなところで観光客も少なく、お土産も下品にあれこれ置いてない。
ポスターカードが数枚、アイノラのピアノで演奏した小品集のCDとか、少しだけ。
私は日本人っぽくたくさん買ってしまい、レジのお兄さんが大変そうでした。
すまん、お兄さん。
小さなアイノラのマグネット、さっきのCD、それとシベリウスがピアノを弾いている姿と奥様アイノのポスト・カードを購入。
アイノさん、ホントに綺麗な方です。
シベリウスはシャイな人で、人前で演奏できなくてヴァイオリン奏者になることを諦めたというエピソードがあります。
私はその内気さに感情移入していたのに、なんすか、こんな美人さんを娶ったりして。
ちなみに、お土産屋さんはカフェになっていて、アイノラでとれたベリー類を使ったケーキやタルトが売ってありました。
形が歪んでいて、明らかに手作り。
とてもきれいなお姉さんが一人で切り盛りをしていました。
一つだけ注文してコーヒーと一緒に食べたら、美味しかった!
「とてもおいしかったです。ごちそうさまでした」をフィンランド語でどう発音するかスマホで調べて、厨房で洗い物をしているお姉さんに調べたフィンランド語を話してみたら、一瞬、ぽかんとされた後、「ああ」という表情をなさって、ちょっとうつむき加減に恥ずかしそうに笑って「Kiitos」と言ってくれました。
あまりにもチャーミングで、もし私が20歳若かったら・・・・・いや、まだ間に合う・・・などと、何か余計なことを言ってしまいそうな気持ちになりましたが、私の鋼のような意志と強固なまでの理性によって留まることができました(嘘です。自分の風貌を思い浮かべて我に帰っただけです)。
まま、美味しいものを作ってくれる人が自宅で待ってくれているので、いいんですけどね。
ハンヌ・リントゥ指揮 フィンランド放送響 シベリウス 組曲「レンミンカイネン」/ポヒョラの娘 ONDINE 2015年発売