私の数少ない友人の一人に、幅広く深い教養をもっている上に、奥様も美しく教養豊か、お子様も優秀という、会うたびに嫉妬で絞め殺し・・・もとい、尊敬の念を深くし、私に刺激を与えてくれる人がいます。

 

 彼は、本やCDを大量に持っているので、間違って二度買いしてしまい、時々、私にCDや本を恵んでくれます。

 彼をずっと揶揄していたのですが、私もとうとうやってしまいました。

 

 聞き始めて、このチェンバロ協奏曲1番、あれ?もしや? 

 ああ、CD棚にあるよ・・・

 

 

 エレーヌ・グリモーさんとのfirst contactはYou tube。

 

 とにかく、音がしっかりと出ていて歯切れ良い。

 音が柔らかいとか、テンポを引き延ばして、べたっとした演奏にしない。

 とはいえ、鍵盤を叩きつけないし、うるさくならない。

 指の動きは速いけれど、一音一音、粒がそろっているし、勢いでリズムが崩れることもない。

 だからといって、単なる精確で機械みたいな演奏でもない。

 

 

 面白いのがグリモーさん、フランス人なのに独墺系、しかもがっちりした協奏曲を偏愛なさっており、最近、やっとフランスの小品集みたいなアルバムが出ました。

 これまで、モーツァルト、シューマン、ブラームス、バルトークの協奏曲やソナタが発売されていたので、好んでCDを買っていました。

 

 

 二度買いしてしまったバッハ集。

 コンセプト・アルバムなので「キレイ名曲オシャレ全集」みたいなものを想像しがちですが、本作はまったく違います。

 

 平均律クラヴィーア集から抜粋して並べ、途中にチェンバロ協奏曲が挟まる。

 しかも、オリジナルと、リストやラフマニノフ編曲版が交互に演奏されるという、かなりハードコアなコンセプトアルバム。

 

 

 普段は、全体的にちょい速めなのですが、今回、意外なのが、テンポが遅くて味わうように弾いていたことです。

 

 ところが、このCD、あまり評判がよろしくないようです。

 

 楽譜通りでつまらないという批判と、逆にアーティキュレーションやはテンポがバッハらしくない(または”正しくない” しかし正しいってなんだ?)というご批判。

 私は楽譜を読めないので、正確かどうかとか、わかりません。

 ただ、「どこが主旋律」で「どう旋律が絡み合うのか」「どうのように旋律が交代していくか」の立体感を味わえれば、私にとっては十分です。

 そして、そのような楽しみ方でいいのであれば、この演奏は合格点だと思いますし、とても美しいと思います。

 

 クラシック音楽は難しいですね、批評が。 

 

 

 

 以前、グリモーさんがブラームスのピアノ協奏曲1番を演奏に来日した時、聴きに行きました。

 演奏が終わり、サイン会で初めて間近でグリモーさんをお見掛けしました。

 40代後半。

 思ったより小柄で、あちらのお国の方特有の取り澄ました雰囲気はまったくなく、はにかんだような笑顔で少し上目遣いでこちらを見る、とても綺麗な方でした。

 

 

 しかし、ヘンゲルブロック+北ドイツ放送協+グリモーさんのシューマンP協奏曲や、CDで持っているギーレン+ブラームスP協奏曲1番だって、You tubeでタダで聞けちゃう。

 

 いい時代ですね。

 

 

 

 

 エレーヌ・グリモー、ドイツ・カンマ―・フィルハーモニー「バッハ トランスクライブド」 (Bach Transcriptions)

 ドイツ・グラモフォン 2500円+税