先日、子供たちから勧められて「未来のミライ」を鑑賞。

 「サマーウォーズ」を見て以来、細田監督作品はなるべく追いかけていたので、なぜ未見になってしまったか思い出せない。

 きっと仕事が立て込んでいて精神的に余裕がなかったのだろう。

 

 さて、以下、ネタバレも含むのでお嫌な方はブログを閉じてくださいまし。

 

 

 

 

(そろそろ始めます) 

 

 

 

 

 高橋ヨシキさんではないが、「ざっくりとした」感想。

「うーん、絵はきれい。それにあるあるネタ満載で面白けど、1時間以内の短編映画くらいが適当ではないか?なんか残念」

 

 前半のクンちゃんの振る舞いは、若干、大げさにしているところもあると思うが、「うん、二番目の子ができると、最初の子はこうなるよねー」という感じだ。また、お母さんがクンちゃんの振る舞いに、ついカッとなって「叱る」というより「怒鳴ってしまう」ことに罪悪感を覚えるところや、お父さんが「子育てをやっているつもり」で鼻息を荒くしているのを、お母さんが「へー、それでやっているつもりなんだー」「イクメンですみたいにして外面はいいよねー」と冷ややかに見ている夫婦の温度差も、子育てあるあるネタ。一方で「これって映画で見せていただなくても・・・ご近所さんで愚痴ってます・・」といったレベルにも思える。

  

 さて、この映画の前半の面白さは、下の子が生まれたことで「帝王の座」から引きずり落とされたクンちゃんが(彼は一人目の子供にありがちなことに、大量のおもちゃを持っている)、その自分の立ち位置を受け入れられるまでの内面的な冒険である。

しかし、冒頭、クリスマス・ツリーが飾ってあった12月から、翌年夏までの約7~8か月の間の話なのに(自転車のシーンで、お父さんが公園にいた外国人女性に、未来ちゃんは生後7ヶ月だと説明している)、風景以外で時間経過が感じられない。

クンちゃんは嫌なことがあると空想の中にいったん逃げ込んで自力で解決し、ちゃんと空想世界から現実に帰ってくるのだが、その嫌なことがあまりにも日常的過ぎて、数日間の出来事に見えてしまうのである。だから、物語全体がこじんまりとしている印象で「大冒険」になっておらず、内容に比べて時間が長すぎるように感じてしまう。

私は鑑賞しながら、ずーっと腕組みして「なんだか残念だ」を繰り返していた。

 

 私がはっとしたのは、自転車のシーンの後だろうか。

 お母さんは「きっとお父さんが見守ってくれていたからクンちゃんは自転車に乗れるようになったんだね」といった趣旨のことを言い、お父さんが涙するシーンだ。私も同じ立場ならジーンとしたと思う。

ところが、映画の中のクンちゃんは、おそらく彼の中にある<ご先祖様の記憶>に助けられながら(あるいは、利用しながら)、自力で自転車に乗れるようになったのだ。決して「お父さんが見守っていた」から(だけ)ではない。

子供はちゃんと自分の力で成長しているのだよということだろうし、私もそれが正しいことのように思える。

 

終盤の「東京駅」のシーンは強烈すぎないかという批判もあるようだが、私は非常によくできていると思う。

迷子などになって守ってくれる存在がいなくなった時の、幼児が感じるとてつもない恐怖と不安と寄る辺なさは、中年になった私でも、自分が幼稚園くらいの年齢で、飛行場で迷子になった時の記憶として覚えているくらいなのだから。

 

問題の後半である。

あれは何を描きたかったのだろうか。

劇中「うちのインデックス」と呼ばれる庭の樹が、家系図を描く際に用いられる樹形図の隠喩なのは単語からも画面からもすぐに分かる。そもそも樹形図は英語でtree diagramである・・・というか、おそらく樹形図の方が訳語だろうが。

この線図はクンちゃんとミライちゃんが樹の中に飛び込んだ時、背景に描きこまれている。

 

私たちが、ご先祖様から脈々と生を引き継いできた存在なのだということを強調したいのはよく分かる。私も、大学生の時に小泉八雲のエッセイ集「心」を読んで、先祖から子孫まで連綿とつながった時間軸の中で己を位置づけて生きているという意識が日本人の美点につながっているという八雲の指摘に、大変に感動した記憶があるからだ。

ただ、あのエピソードとクンちゃんの成長譚が私の中でどうにもつながらない。

 

時々感じるのが、細田守監督作品の前半と後半のつながりが、今一な点である。「バケモノの子」は特にそうだった。

 

あ、でも、「福山」曾おじいちゃんのプロポーズ・エピソード。あれは泣いたね。

ずるいなあ、細田監督。

 

あともう一つ! あのクンちゃんの可愛らしい寝癖!

あのくらいの年齢の男の子の寝癖を、正確に描いた初めてのアニメーションではないか。

って、どうでもいいか。

 

 

 

細田守監督

「未来のミライ」 2018年劇場公開