今年4月の出来事である。
 
任天堂の家庭用ゲーム機「WiiU」を起動すると利用者の分身キャラが集まり、ゲームの感想が表示される「わらわら広場」の商標登録について、笑笑の運営会社が混同を招くと特許庁に異議申し立てを行ったとのこと。
 
任天堂は「WaraWara」を2012年6月1日に商標出願、区分・指定商品等は、ゲーム、インターネット、ソーシャルネットワーキングサービス、同年12月14日に登録。
「笑笑」運営のモンテローザは「WARAWARA」として2009年以降に、区分・指定商品等を飲食関係で出願、登録。
 
10号では難しい。指定商品等が異なるためである。
では15号ではどうか。
ここで面白い事情がある。モンテローザは「笑笑」について、登録商標が著名であるとして、飲食関係外で「防護標章」を登録している。確かに有名と言えば有名だし、防護標章登録がなされているとすれば、商標の「周知度」の有効な判断資料となる(15号審査基準が準用する10号審査基準)。
 
モンテローザは「異議申し立てを避けたければ、任天堂は『わら』と『わら』の間に、スペースを空けるくらいの配慮はできたはず。混同されても仕方がない」と全面的に争う姿勢を示していると言う。
 
モンテローザはWiiUが販売されている北米、欧州など数十カ国の特許庁に対しても異議申し立ての対応を取る方針を固めている。同社は2012年に、韓国での無効申し立てで勝利した実績等を盾にしたいと考えているようだ。確かに、他国でも勝訴した経験があると、特許庁の心証には申し立て者に有利に働く。ただ、賢明な読者はご承知の通り、属地主義の観点からは「それはそれよ」ということで、判断が分かれる可能性もある。国によって周知性等の判断基準が異なる以上、結果が食い違う可能性は多分にある。
 
商標登録後の異議申し立て件数は年間400件程度であるが、実際にはあまり認められないというのが実務担当者の実感。異議申し立てというのは、折角登録した商標のケチを付けるものであるため、容易に認めれば、特許庁の信用に関わる。特許庁としては、モンテローザの主張を認めたくないという力学が働くのが通常だ。
 
さて、以上の要素を加味して、特許庁がどのように判断するのか。私見では認められないと考える。皆様はどうか?




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