サントリーニからアテネに戻って来た

また性懲りもなくお世話になった御婦人の

所に…自然と足が向いてしまう

彼女を茜さんと呼ぶことにしよう

そして茜さんの家を訪ねると

日本人の来客があった

彼は大道芸人としてギターを片手に

ヨーロッパ中を周っているらしい

どこかジョン・レノンに似た風貌で

ミュージシャンらしい雰囲気がある

日本にはもう何年も帰っていないと言う

北欧から帰って来たらしいのだが

物価が高いので、余り長居ができないと

言っていた

僕は二人にサントリーニの美しさに

感動してべらべら喋っていた

二人は僕より良く知っているのに

黙って笑みを浮かべながら聞いてくれた


それから毎日一回は彼女の家を訪ねる

ようになる

そして毎日誰かしら、お客さんがいる

ユーゴスラビアから二人のカップルが

来ていた

彼の方は医者らしい、そして今内戦が

激しく身の危険を感じてギリシャに

逃げて来ていると…

またある時は、星を専門に撮っている

カメラマンやドアを中心に絵を描いて

いる彼、偶然にも同じ大学の後輩だった

茜さんにこのあとどこの国を周るの?

トルコを強く勧められて、急遽行く事に

した

大学の後輩ともテッサロニキと言う

女人禁制の山に行ってから、

その後イスタンブールで

落ち合う事にした


茜さんはアパートを経営していて

丁度改装が終わった所で

誰もまだ入居していないから

家具は何もないけど、電気ガス水道は

通っているから使ってちょうだいと…

カメラマンと僕は図々しくも

そこに住まわせて貰った


あとバルセロナにも行くと言ってたわよねえ?

ペンションを経営している日本人が

いるから、気に入ったら使ってあげてと

住所を書いたメモを渡してくれた


彼女はどこまで顔の広い人なんだろう?

イスタンブールで待ち合わせする日が

来るまで、彼女の家を行ったり来たり

いつか日本に帰って来たら、その時は

今度は僕がおもてなしをさせて

頂きますと…


パルテノン神殿のふもと
遺跡と現代が混在する