2回の準備授業を経て、S君のWアカ生活が始まりました。


初回授業では保護者同伴のオリエンテーションがあり、そこで今後のクラス分けも発表されました。


先日の基礎力診断テストの結果を元にしたクラス分けで、テストの平均点は150点と少しだったので、その辺がクラス分けの基準となります。


S君はもちろん一番下のクラスでした。


私はS君にテストの偏差値や順位などは説明しておらず、ただ「一番上のクラスには入れないかも知れない」とだけ伝えてありました。


オリエンテーションが終わり、下位クラスの生徒は教室を移動するように指示がありました。

こんなところからもう人生の序列は始まるのか、と、切ないような惨めなような何ともいえない気持ちになりました。


「僕は下のクラスなの?」


S君のあどけない顔と質問にドキリとしました。

嘘をついても仕方ないので、

「そうだよ。だから移動するよ」

正直に答えると、S君はふぅんと、素直に荷物持って立ちました。

彼の胸の内は、私にはわかりませんでした。


S君が授業を受けている間、私はコーヒーショップで自省していました。


偏差値やテストの成績というのは、非常にシンプルで分かりやすい反面、残酷です。

数値化されて順位化されて評価されるのです。

その世界にS君を放り込んでしまいました。


幼少期の個体差は大きく、月齢、持って生まれた特性、日常生活の差が顕著に出ます。

アイデンティティを確立する重要な時期に、自己評価を下げる環境に子供を置くのは、正しいのか。


進学塾のことを事前に調べて考えれば自明のとこであったのに、合格するのに夢中になって考えが及びませんでした。

私はいつも、気づくのが遅いのです。


帰り道、S君に今日の授業の感想を聞きました。

「面白かったよ!知ってる子もいて、嬉しかった」

明るく答える彼に、私は尋ねました。

「S君、Wアカデミーを続けたい?」

キョトンとしたS君は「あたりまえだよ」と答えて笑いました。

「僕はWアカデミーが好きだよ!」


二月の寒い夜でした。

北風にS君が震えたので、私は自分のマフラーをS君に巻いてあげました。

ぬくぬく、と声に出す可愛い息子を見て、私はとりあえず一年、と思いました。


始まったからに、一年間はやってみよう。


その間に限界だと思ったらすぐに撤退しよう。


そう心に決めました。