モモの死因
「免疫性介在性溶血性貧血」
あの日、いきなり散歩の途中で目が見えなくなったモモを慌てて病院へ連れて行った私と夫。
詳しい検査の結果
「ひどい貧血を起こしてます。」と言われた時は貧血ならそんなに大した病気ではないんだろう、一時的に症状が出てるだけで目もそのうちには治るだろうと少し安心した夫と私だった。
でも、院長先生に
「それが普通の貧血と違うんです。」と言われてだんだん不安になった。
薬を処方されたけど改善方向に向かわなかったので、再度連れて行ってそのまま入院したモモ。
私は毎日病院へ行って先生の許可をもらって病院回りだけほんの少しモモを散歩させた。
モモも自分の身の上に起きた症状に戸惑っているみたいで、もう私たちの知っているモモではなくなっていた。
行くたびに先生の顔も厳しくなった。
行くたびにモモも可哀想な姿になっていた。
私は、「助からないんだったら最期は家に連れて帰りますので言ってください。」と先生に伝えていた。
先生は何とかモモを助けようとしてくれた。
輸血もして、治療も他の病院の先生と相談してやってくれてた。
でも、モモは良い方向に向かわなかった。
渋る先生に懇願して夫の反対を押し切って
一晩だけの約束でモモを家に連れて帰って、
その晩はモモに添い寝した私。
腕枕して、撫でて、いっぱいモモと話しした。
二人だけで夜を過ごたモモと私。
朝起きてもう近くも散歩出来なくなったモモを夫と二人で家の前だけ散歩させた。
その後、病院に連れて行った。
束の間の、一晩だけの我が家だったけどモモは病院にいる時より心なしか元気に見えた。
夕方は、娘と二人で病院へ行った。
私たちの声を聞くとモモは嬉しそうな顔をした。
私たちの知っているモモの顔に戻っていた。
私と娘に精一杯の笑顔を向けて笑ってくれたモモ
先生も
「家へ帰って少し元気になったみたいです。」と言ってくれた。
先生も、私も、夫も、娘も、
もうモモは助からないだろうと心のどこかで思っていた。
でも、誰もが奇跡を信じていたのだ。
モモは再び元気になると思いたかったのだ。
病人が、最期は命の灯をほんの少し灯すように、モモも一瞬私達のために元気になってくれた。
最後まで優しいモモだった。
眠れぬ不安な夜を過ごして
翌朝、もうそろそろ病院へ行かなくてはと思っていた矢先に
電話が鳴った。
駆けつけたけど間に合わなかった。
モモは天国へ旅立ってしまった。
聞けば、お天気もよく朝は元気だったので
看護婦さんが少し病院の庭に出してくれたとか。
で、もうそろそろ中に入れようとしたらモモは
嫌がって抵抗したそうだ。
そのまま亡くなってしまったモモ。
家ではゲージに入れた事もなかったモモだけど、病院では「自分からおとなしくゲージに入ってくれます」と看護婦さんから言われたモモ。
モモも何とか助かりたかったんだ。
おとなしく治療を受けたら助かると思ってたんだ。
自分からゲージに入るモモの姿を思うと不憫だった。
そんなモモも
自分の命がもう助からないと悟り、
全ての治療を自分から拒絶したのだろう。
最期は、
病室ではなく青空の下で太陽を浴びて自らの意志で自分の生を閉じたのだ。
私はその瞬間
モモを感じモモの声を聞いたような気がした。
家に連れて帰っても、血液の病気だったので鼻からずっと出血してたモモ。
一晩中、モモのそばで鼻のガーゼを変えながらモモと寝た私。
次の日の朝から
私の世界は一変した。
モモの死因「免疫性介在性溶血性貧血」は
抗体産生細胞の刺激、或いは質的な変化が起こる事で発症する病気。
急性貧血を起こす病気で赤血球の崩壊が亢進する病気。
病気の原因は三つ
自己免疫性
       赤血球に対して抗体が産生された結果発症
同種免疫性
       抗赤血球同種抗体が存在した結果発症
薬物誘発性溶血貧血
       薬物に対する抗体と薬物の結合体や
       薬物による抗体の産生が誘導された結果発症
メスの発症が多く、オスの3〜4倍の発症率で
2歳〜8歳までの発症が多い病気
発症後、2〜3週間で死亡する例も多く致死率が高くこの病気を発症する4割が死亡する。
非常に致死率が高く治療が行われてもダメージを受けてしまった内臓までは完治できなくて、出血多量で死亡する。
モモは8歳になる前、7歳と9ヶ月で死んだ。
入院して2週間で手当の甲斐もなく死す。
モモを家に連れて帰る時
「奥さんに泣かれるのが一番辛い。僕の判断ミスです。」と院長先生は頭を下げてくれた。
もう助からないと分かったら家に連れて帰るので教えて下さい。と私が言った約束の事だ。
最後、少し元気になりかけてたので先生も判断しにくかったのだろう。
何とか助けてくれようとしてたのはわかるので
私はただ頭だけ下げた。
引っ越しして一年と二日
10月4日にモモは天国に旅立った。
あの日から毎年、毎年
10月4日は特別な日となった。
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