昔々、一度だけボランティアをした事があるの。
子供の手がちょっと離れて、お年寄りがあんまり病気になってない一時期にね。
何か世の中のためにボランティアをしようという気になって、自分にどんなボランティアが出来るかと考えてみたの。
力仕事はしんどいし、あんまり人前に出るのも苦手やし、お年寄りのボランティアなら、日常やってるし、子供のボランティアも日常やってるようなもんだし。わざわざそんなボランティアをせんでもいいし。
と考えていったらこれが結構難しいのよね。
で、あまり人前に出なくて、私でも出来そうなボランティアを考えて、教会のお弁当作りのボランティアをする事にしたの。

当時、住んでた近くの公園の端にキリスト教会があって幼稚園もやってたんやけどね。
そこで一人暮らしのお年寄りのお弁当を作って一日に一回届けるボランティアがあるのを知ってね。
それなら、人前に出んでも済むし、お弁当を作るくらいやったら私でも出来そうと考えたの。
で、そんなボランティアだけど無条件に入れてくれるわけではなくて、面接があったのね。
二人の老女性の面接官の前でテストされて
無事に受かって?
晴れてボランティアの仲間入りをしたの。
まあ、儀式みたいなもので誰でも採用されると思うけどね。

若い男子のボランティアは作ったお弁当をバイクと車で届けるの。
で、若い女の子は届けた先のお年寄りの様子を聞いてチェックして何か異変が起こってたら上の人に知らせるボランティアなの。
で、若い女の子でもない、車どころかバイクにも乗れない私は、当然賄いさんを希望しました。
もちろん、毎日は行かれへんから週ニにしてもらってね。

そして、行ったら白い割烹着と頭巾とマスク(これは自前)のいでたちで、賄い場に行くのね。
まあ、子供達が通ってた幼稚園の食堂のミニ版だったからすぐに慣れたわ。

で、その日に作る献立表を渡されて、栄養士さんが黒板にそれを書いて説明しはるの。
すごい丁寧やねんなあと感心してたら、
理由がすぐわかったわ。

5、6人いてるボランティアの中で私が一番若かく、あとは年配の方々ばっかりでね。
そこで長、みたいなリーダー格の人がいてはってね、かなりの年配なんだけどシャキシャキしてはんの。
シャキシャキしてはんのはいいんだけど、
栄養士さんの渡された献立とうりに作らへんでね。
後で聞いたら、毎日くらい作りに来てくれて
しかもボランティア歴が長いから、若い栄養士さんを上手に無視して好きなようにしはんの。
その人が何か言ったら栄養士さんは渋々従うみたいにね。
ボランティアで来てくれて作ってくれはるから、あんまり強く言われへんみたいでね。
でも、やっぱりプロの顔も立ててあげんとねー。
そういうところは私は気になるわ。

で、当然、そのヌシの方の言うとうりに作らへんとあかんから私も一番下っ端で従ったわよ。
まあ、私は昔から手早いし器用だから、お弁当作りは簡単やったけどね。
それはいいんだけど、出来上がったお弁当とお汁をジャーに詰めて終わったら、あとはみんなで残しておいたお弁当を食べるのよ。
で、そのお弁当もおとなしく食べるんだったらいいんだけど、ワイワイ言ってるのは主に人の噂話しなのね。
ボランティアに来てるのか、自分達の息抜きに来てるのかわからへん雰囲気でね。

そのうちに、私の苗字を知ってはる人がいてはって、家のことを根掘り葉掘り聞きはるの。
うっとうしいやんねえ。
せっかく、家のやり繰りして世のため、人のため、一人暮らしのお年寄りのお弁当を作ろうと張り切ってる私に、また家の話しをせえゆうの?

で、次からは
「今日はちょっと用事がありますので」とお先に失礼するようにしたの。
二回に一回はお付き合いしたけど、だんだん
そこのお年寄りのお相手もしんどくなってね。
家でもお年寄り、外でもお年寄りの相手なんかしてられへんわ。となってやめることにしたの。

「やめます」と面接してくれたシスターに挨拶に行ったら、残念そうな顔をしてはったから、私みたいに長続きしない人が多かったんやろねえ。
結局半年も続かへんかったわ。
三ヶ月位やったかなあ。

そこを辞めるときにミトンがボロボロやったから、最後に新しいミトンを作って持って行ったら
すごく喜んでくれて。

今、震災や各地での災害に全国から駆けつける人達を見ると本当に頭が下がります。
特に若いボランティアの方達の力ってすごい。
本来ボランティアってそういうものだから。

結局、私のボランティアはミトンを
作っただけに終わりました。

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