高校・大学、注視の改革 下村文科相「人材育成、大学に責任」
大学入試を総合評価に変え、同時に高校教育と大学教育も大転換する――。文部科学省が力を入れる「高大接続改革」は、具体的な制度設計の議論に入った。影響は大きいが、具体像はまだはっきりしない。改革の現在地はどこか。「難しい」「負担が過大」といった懸念にどう答えるのか。
■新テストが柱、夏ごろ方向性
高大接続改革は昨年末、中央教育審議会(文科相の諮問機関)が提言し、文科省が具体化を進めている。
最も大きな柱は大学入試を変えることだ。内容は主に三つで、2020年度にセンター試験を衣替えし、推薦入試などに使える高校生の共通試験を新設、各大学の個別試験に面接や高校の成績といった多面的な評価を導入する。
新テストは現在、専門家が検討中で、夏ごろには方向性を示す予定だ。個別試験は各大学にゆだねられている。
高校教育では、20年度以降小中高で順次始まる新学習指導要領で、生徒が議論などを通じて主体的に学ぶ「アクティブラーニング」の導入が検討されている。詳細は16年度までに決まる見込み。大学教育は、今年度中に学生受け入れや学位授与の方針策定を大学に義務づけ、入試で問う能力や育てる人物像を明確化させる。
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学校現場や専門家からは、改革に対して期待の声も、心配の声もある。どう進めるのか。下村博文文部科学相に聞いた。
――多面的・総合的評価のためには、部活などの課外活動も含めて高校教諭が把握する必要があります。
今の態勢では無理だろう。ボランティア活動、部活動など子どもが関係する全ての空間が教育的に大切になる。財政的、人的支援をいかにするかだ。これからはお金をかけて人も確保し、地域ぐるみで子どもたちを育てていく。
――所得の高い家庭ほど、子どもに様々な体験をさせやすい。学力以外も問われるなら、教育格差がさらに広がるのでは。
放っておけばそうなる。差を縮めていく貧困家庭への支援をしたい。
――高校教育で、議論や発表など主体的な学びを導入する場合、学ぶ知識量を減らさないと過剰な負担になるのでは。
想像力や企画力のためには基礎基本も重要だ。日本の高校生はアメリカの高校生の2分の1ぐらいしか勉強しない。ただ、全ての子に全ての勉強をもっとしろということではなく、その子にあった勉強をどうさせるか。天才をもっと伸ばすような教育が必要だ。
――大学教育は、社会への出口に当たる卒業認定をどうするかが課題です。
トップレベルの大学は研究が中心で、教育としての視点はなかったのではないかと思わざるを得ない。大学が人材育成に責任を持つ。卒業までにどれぐらいまで到達させるかを明確化してもらう。
――卒業認定を厳しくさせるなど、国が学位授与方針の内容を強制するのでしょうか。
強制ではないが、時代の変化に対応する大学は生き残っていくだろうし、国立大学でも現状維持のままなら淘汰(とうた)される。危機意識をいかに共有するかによって取り組みが変わるだろう。
(聞き手・高浜行人)
■高大接続改革のポイント
【大学入試】
・各大学の個別試験を総合評価に
・高校生向けの共通テストを新設
【高校教育】
・「アクティブラーニング」などを盛り込んだ学習指導要領改訂
【大学教育】
・入学者受け入れや学位授与の方針の策定を義務づけ
・各大学が卒業認定を厳格化
(朝日新聞より)
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