A:「上妻!何故おまえともあろう男が、こんな下衆な犯罪に手を染めたんだ!」
B:「うるせぇッ…!オレには、とにかくデカい金が必要なんだよッ…!」
A:「だからといって、悪事であぶく銭、懐に忍ばせていいなんて道理があるか!」
B:「ふんッ…!きさまにこのオレの気持ちなんて、わかるものかッ…!」
A:「何が言いたいんだ?」
B:「オレには両親なんてものがこの世にいない、なんつったって孤児院出身だからなッ…!まぁそれぐらいの身辺調査は、おたくら刑事さん方はとうのとっくにお済みのことだろうがなッ…!」
A:「おい上妻、ちょっといいか?」
B:「何だよ刑事さんッ…!」
A:「いやその『ッ…!』て語尾表現、どうにかならんのか?」
B:「おっといけねぇ、つい小説ぶってしまってたなッ…!」
A:「いや直ってねぇよ!」
B:「まぁそれはそれはひもじい少年時代だった!だからオレは、家庭を支える大黒柱として、絶対に我が子にだけは、そんな貧しい思いをさせてやりたくなかったんだッ…!」
A:「直す気ないんだな」
B:「それで毎日朝から晩まで、まさに仕事二刀流な生活だった…」
A:「意味わかんねぇよ!『一本槍』だろ!」
B:「オレはいつも、家族サービスで頭がいっぱいでさ!」
A:「そこ仕事じゃないんかい!」
B:「『どの機種が一番うちに向いてる金額プランなんだ?』って」
A:「『家族サービス』ってケータイの家族割のことかよ!」
B:「なんだかんだで夫婦仲は円満、息子達も皆、灘高でがんばってる!」
A:「よかったじゃねぇか!」
B:「来年度は無事に、末娘も灘進学だ!」
A:「いやウソつくな!」
B:「まったく2億強奪を企てるなんて、オレもつくづく落ちたもんだよ!」
A:「実にその通りだよ!」
B:「オレもかつては、某一流銀行で部長を務めてたんだ!」
A:「そうなのか?」
B:「それが今では、立派に専務だ!」
A:「昇進したのかよ!」
B:「そこで悩んだ、『オレはこれから、どうすりゃいいんだ!』」
A:「職を全うしろ!」
B:「それで結局、どうしても金が要りようになったんだ!」
A:「文脈から理解できねぇよ!」
B:「ちょっと失礼。悪いが、タバスコもらえるかな?」
A:「うちはピエトロじゃねぇんだよ!『ス』が余計だ!」
B:「あと、マザー2したいからスーファミ用意してくれ」
A:「いつまで休憩する気だバカヤロー!さっさと供述せんか!」
B:「まぁ刑事さんもおわかりの通り、資本主義下では金が無くては物事始まらない」
A:「何が言いたいんだ?」
B:「あの菅家も言ってたろう?『もみぢの錦…』」
A:「『神のまにまに』、てそれ『money』じゃねぇよ!」
B:「まぁこの年になるとぼちぼち退職も頭にちらつく始めるものだ。オレも妙に老後が不安になってな」
A:「専務なら退職金たんまり出るだろ!」
B:「それですっかり、倹約術の書籍を読む習慣がついちまってさ」
A:「知らんわ!」
B:「今までに軽く50冊は買ったな」
A:「逆に金のムダだよ!」
B:「なぁ刑事さんよ、オレは結局、何の罪に問われるんだ?」
A:「まぁお前の場合は自分の勤め先の銀行での強奪計画である上未遂に終わってるから、おそらくは社内で小言くらうか不問に付される程度だと思うがな」
B:「それは民事の範疇だろ?刑事事件としてはどうなる?」
A:「…おまえナメてんのか?『今すぐ2億を出せ!…オレの口座から』って遊んでんじゃねぇよ!強盗の通報が来たから駆けつけてみたら、ただの『お引き出し』かよ!たいがいせぇよ!」