私は競争のない、争いのない世界で暮らしたいと思っています。

ですが、一番にはなれなくとも、この人には勝ちたいという競争心がどこからともなく出てくるような人間です。

争いが起きる前に止められるようなえらい人になれたら良いのですが、おそらく私は争いが決められたあとで戦いに行く人なんです。そこで私はきっと上の人に気に入られようと一生懸命戦う人になる様な気がしています。ふるさとの親や友人のため、お国のためとその争いに参加していることの正当性を無理やり自分に言い聞かせながら、人を殺すことにも正当性をもってしまうと思うんです。

もし変なことを言うと家族にも親戚にも迷惑がかかるかもしれないので、流れと勢いに乗って、戦地へ送り出されていくことでしょう。

そうなると私が反論できるところは戦場しかないので、できれば前線で争いを止められるような人になりたいと思います。敵国といわれる人たちひとりひとりに「本当はこんなことしたくないんでしょう?やめようよ」と言い終わらないうちに打ち殺されてしまうのかもしれません。まったくの無駄です。かえって足手まといで迷惑をかけてしまうだけかもしれませんね。それでも、弱い心なりに私でも最後まで争いに抵抗したいという気持ちは持っていたいのです。

 

 

私は、このリングの下に「力」を語る為に棲みついたのじゃない。「無力」という力を語るために棲みついているの。

人はいつも、取り返しのつかない「力」を使った後で「無力」という力に気づく

野田秀樹「ロープ」より