読み切り短編小説~ノウバディ・ノウズ~



「チーズバーガーなんて、夏に食べるものじゃないだろう」


バルコニーを突き刺す眩しい太陽に目を細めながら、マイクは部屋の中のジェフに向かって言った。


「なんだい、そりゃ」


「あのチーズのにちゃにちゃとする食感は夏にはありがたくないね。君が賢い男なら夏にはチーズの入っていないハンバーガーを注文することだ」


ジェフは首を傾げて、またカフェオレを作る手を動かし始めた。


マイクの話には大概中身がない。正しい対処法は相手にしないことだ。


それより今は次の営業プランを考えなくてはいけない。


自分用の特別甘いカフェオレを右手に、マイクのを左手に、バルコニーへ上がっていった。


「あぁ、ありがとう、ジェフ。この世で君のカフェオレに勝るものはないよ。君のカフェオレに勝るものを除いてはね。ワハハハハ」


「面白くもないジョークをありがとう、マイク。ところで営業プランは頭に浮かんだかい」


「問題はそこだ。私の頭の中には先ほど正しいプランが浮かんだ」


「早速聞こうじゃないか」


「我々の正しいプランは、正しいプランを立てることだ。ワハハハハ」


ジェフは肩をすくめるしかなかった。


実のところマイクに悪気があるわけではないのをジェフは知っている。


仕事の考えが上手く進んでいないのを彼なりの冗談で誤魔化しているだけなのだ。


その時、二人の横に大きなイナラシモレーダが現れた。


「コンペが明日と迫っているのは君も知っての通りだ。カフェオレ一杯で恩に着せるわけではないが、つい一時間前まで別件で拘束されていた僕に比べ君のほうが考えが進んでいるのが自然だろう」


イナラシモレーダは地面が揺れんばかりの鳴き声を周囲に撒き散らした。


「君も率直な男だ。ならば正直に言おう。プランはいくつか浮かんだが、いずれもこれまでの失敗を覆すものではなかった。人間は失敗から学ばなければならないが、失敗に終わったプランたちも懸命に考えたものであるのは事実だ。現実はそう簡単ではない」


イナラシモレーダは泣き叫んだ。


「もっともだ。しかしプレゼンテーションで躍起になってこの企画を通したのは君だ。僕はボスに指名されたアシスタント、簡単に言えば巻き添えだ。自信があるからまたこの企画を通したんじゃないのか」


冷たいカフェオレに手を伸ばし、熱くなった頭を冷やす。


マイクも自分の行いの責任の重さは痛感していた。


イナラシモレーダは飛び跳ねて地面を揺らしている。


「どうだい、ジェフ。ここはひとつバイクでひとっ走り現地へ行ってみないか」


「現地へならこの前行っただろう?」


イナラシモレーダがあたりの物を手当たり次第にぶち壊す。


「バイクに乗れば気分転換になるし、現場に行けばまた何かアイデアが浮かぶかもしれない。資料なら君のモバイルPCに全て入っているだろう。考える場所はどこでもいい」


「まぁいい。そうするか。僕も徹夜の会議でストレスが溜まっている」


「ところでジェフ、絶対にバイク事故を起こさない方法を知っているかい?」


「なんだろう、知らないな」


「簡単だ。バイクに乗らないことさ。ワッハッハ」


今度はジェフはにやりと口角をあげた。



 ~終~




どうです?意味もなく書いてみました。

小説、って言えるのか、これは。まぁいいでしょう。

ただ精神的に不安定になって現実逃避してなんかしてたかっただけです。

いやぁ、書いてみれば書けるもんですねぇ。見事な作品が。冗談です。なんなのコレ。