修業時代日記~第21話
199×年○月△日
辻エコールキュリネール国立フランス料理専門カレッジ。
今日はその卒業式だ。
その数日前に辻 静雄校長が他界されたため卒業式に先立ってお別れの会が行われた。
辻 静雄、日本のフランス料理界に多大なる影響を与えたお方。
日本とフランスの架け橋となりフランスのトップシェフを日本に招いたり、フランスの城、シャトーを買取りそこに料理学校を開校したり、その功績は計り知れない。
そしてその卒業生たちも日本の第一線で活躍するトップシェフばかり。
まさに日本におけるフランス料理の父だ。
その辻 静雄校長が亡くなられた・・・・・。
正直・・・・・ショックだった。
辻調理師専門学校はまだ続くだろうが、辻 静雄はもういない。
くしくも・・・・辻 静雄の最後の弟子となった。
もう、卒業式などどうでもよくなっていた。
「先代の辻 静雄校長の後を引き継ぎ新たな校長となりました辻 芳樹です。」
御子息の芳樹氏が新しい校長となられるそうだ。
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卒業後、半年が過ぎる頃。
8月の下旬。
自分は羽田空港に一人で向かっていた。
空港に着くと知った顔がちらほら見える。
「よ~~~~~!!剛ちゃん久しぶり!!」
同じクラスからもフランス校秋コースに行く仲間は何人かいた。
「いよいよだな。」
「ああ。いよいよだな。」
ゲートをくぐりソウル行きの飛行機に乗り込む。
ソウルでトランジットしそこからパリへ。
ソウルでは大阪校の生徒とも合流する。
海外へ行くのは高校の修学旅行で中国以来。
自身2度目の海外だが、今回は旅行ではない。
留学・・・・
いや、
修行だ!!!
不安もいっぱいだが、期待はそれ以上だ!!
夢にまで見たフランス。
本場のフランス料理!
早く見たい!!早く食べたい!!早く料理がしたい!!
そんな思いを翼に乗せ、飛行機はパリへ向かう。
ソウルを離陸してから8時間。
やっとパリに着いた。
こんなに長い旅は初めてで、既にクタクタだ。
しかし、夢にまでみたパリである!
・・・・・・・と思っていたら、またすぐにトランジット。
今度はフランス第2の都市、リヨンに向かう。
美食の都 <リヨン>
この街の郊外リエルグ村にその学校はあった。
リヨンの空港からバスに乗り換え1時間あまり。
もう・・・・グッタリ・・・・
「おい!!見えて来たぞ!!」
学校の門が見えてきた。
周りはブドウ畑。
「はあぁ~~~。やっと・・・・着いた。
つ、疲れた・・・・・。」
バスが校舎の前に着く。
窓から眺めると、白いコックコートをまとった先生が数人手をふっている。
背の高いフランス人の先生と・・・・・・・
日本人の・・・・・・・・
髭の生えた・・・・・・・・・
物凄く・・・・・・・・・
怖そうな・・・・・・・・・・
先生が・・・・・・・。
「うっうわっ!こ、怖そうッス・・・・・・。」
ビビッたが、でも負けない!
俺はここで一流のシェフを目指す!!
・・・・・・と意気込んでみたはいいものの、
この先に地獄が待ち構えていようとは
思いもしなかった。