ぼくが南正人というひとを初めて知ったのは、長谷川きよしを通してだった。最初に聴いた南正人の唄は、だから本人の唄で聴いたのではなかった。
『こんなに遠くまで』
 この唄を歌う前に、長谷川きよしが、
「南正人さんの曲です」 
 と、言って紹介した。
 胸が締め付けられるような曲だった。掛け値なし、本当に名曲です。
 この曲に関しては、もうひとつ思い出がある。
 平井和正氏の『人狼戦線』の中で、主人公犬神明がふらりと入った店で、この曲を聴く場面がある。太った女性ボーカルが歌っているという設定だったと思う。歌詞もちゃんと紹介されていた。
 長谷川きよしというひとは南正人という人がよほど気に入っていたのだろう。ずいぶん昔に出版された楽譜集の中に収録されているインタビューでも南正人の曲について、
「『濡れたふりなどさらさらに、まして乾いたふりなどは』という言葉が凄い」
 ということを言っていた。
『TRAIN BLUE』という曲の中のフレーズだ。真っ黒い機関車になって走り続ける男を歌った曲だ。
 このアルバム『回帰線(LPです)』は持っている。
 収録曲は以下の通り。


1.TRAIN BLUE
2.夜をくぐり抜けるまで
3.こんなに遠くまで
4.海と男と女のブルース
5.It Can't Be Over
6.愛の絆
7.青い面影
8.悲しみ忘れた悲しさ
9.果てしない流れに咲く胸いっぱいの愛
10.ジャン
11.青い面影
12.ヨコスカ・ブルース
13.赤い花


 中でも『ヨコスカブルース(海と男と女のブルース)』『こんなに遠くまで』『夜をくぐり抜けるまで』、そして『ジャン』――この曲は破壊的な名曲だ――このあたりは本当にいい。
 このアルバムは1994年にCD化もされている。その気がある方は一度聞いてみてください。そんにはなりません(笑)。


 南正人という人は、ヒッピーとかフーテンとかそういった言葉が似合う雰囲気を持っている。70年代というか、とにかく前世紀のある時代の懐かしさを感じさせる人だ。そのくせ、いつまでも古びない新しさもある。
 実際に曲を聴いてもらえばわかると思うが、作曲家として非凡な才能のある人なのだ。


 上海帰り 
 わたしのブギウギ
 オーエンジェル


 名曲は他にもいっぱいある。
 昔あった小さなライブハウスで『オーエンジェル』をカバーしているサングラスをかけたミュージシャンを見たことがある。良かったですよ。誰が歌っても名曲は名曲なんだねえ……。
 その南正人がやってくる。家の近所にあるお店にライブにやってくるのだ。彼が歌い続けていることは知っていた。できればずっとずっと歌い続け、いい曲をたくさん書いてもらいたいと思う。


 南正人に興味のある人はこちらへ→南正人オフィシャルウエブサイト