誰がなんと言おうとフラメンコギターだった。是が非でもフラメンコギターだった。
たとえばフラメンコが好きかと聞かれれば、必ずしもそうではない。フラメンコギターが欲しかったのは、憧れの人、長谷川きよし、パコ・デ・ルシア等々がフラメンコギターを使っていたからだ。それに、あの乾いた音は大好きだった。今でも好きだ。重厚さよりも軽快さが好きなのだ。良い悪いの問題ではなく、好みの問題である。
で、フラメンコ……フラメンコねえ。嫌いではない。だが、心中したいというほど好きではない。自由奔放の代名詞のようなフラメンコだが、あれは結構制約の多い音楽なのだ。フラメンコを特徴づけているのはコンパスという独自のリズムだ。この種のことは、インターネットにいくらでも落ちている情報なので、ここでは書かない。とにかくコンパスから外れたものは、フラメンコではなく、逆にコンパスにはまっていれば、なにをどうしようがフラメンコということになる。
ちょっとばかり格好をつけて言えば、
「俺はフラメンコが好きなわけじゃねえ、パコ・デ・ルシアが好きなのさ」
と、いうことになる。
ギタリストというのなら、好きな人はいっぱいいる。たとえば、ウェス・モンゴメリー、ロバート・ジョンソン、マニタス・デ・プラタ、山下和仁、リッチー・ブラックモア、ジミー・ペイジ、サンタナ、タック・アンドレス、チェット・アトキンス、BB・キング、エリック・クラプトン、ジョニー・ウインター、デュアン・オールマン、ジャンゴ・ラインハルト、イングヴェイ・マルムスティーン……まだまだいるが、ここらあたりでやめます(笑)。
しかし、全ジャンルを含めてもっとも好きなギタリストは? と訊かれれば――難しいが、
「はい、バーデン・パウエルです」
ブラジルのギタリスト。ジャンル的にはサンバ・ボサノバといったところだろうが、厳密に言えば、これはバーデン・パウエルの音楽だ。その演奏は、誰かが音の洪水と評していたが、本当にそんな感じがする。凄まじいの一語に尽きる。
これはぼくだけの印象だと思ってください。パコ・デ・ルシアの演奏はたとえていえば《鉈》だ。バーデン・パウエルは《剃刀》だと思っている。剃刀の刃を渡るような演奏をする。狂気を感じさせるという言葉があるが、確かにそういう感じの演奏である。若い頃のバーデンは、映像を見ていると確かにやばそうな男である。天才なのだろう。絶対に友達にはなりたくないが、演奏を聴いている分には最高だと思う。
動くバーデン・パウエルを見たい方はこちらをどうぞ。凄いですよ(笑)。