記念すべき中村中のファーストアルバム「天までとどけ」の中で、「未練通り」という曲が好きだ。伝法肌の粋な姉さんが、惚れた男(この場合、少し駄目な感じの男がいい)が、ちょいとばかり弱気になって故郷へ帰ると言い出したのを、

「ふん、帰りたけりゃ帰りなよ」

 と、冷たく突き放している姿が目に浮ぶ。もちろん、それは表向きのことだ。お姉さんは駄目男に心底惚れている。だから、中ちゃんが歌う、

「帰るあんたはいいよね、誰かが待ってる故郷で~」

 と、言うくだりは、実は粋な姉さんの心の声ということになる。

 ――なんて、勝手に想像して、この曲を楽しんでいる。

 すると、勝手な想像だろうがなんだろうが、やっぱり「未練通り」には「秋の空」が似合うのだろうと思う。これが春・夏・冬どの空でも似合わないような気がする。秋だから「未練通り」にひとり取り残されそうな粋な姉さんの気分を、よくあらわすことになるのだと思う。その前に夏があり、次に冬が待っている。

 強がっている格好のいい女の人が好きだ。この場合のかっこよさというのは見た目の美しさではない。存在のあり方というか、生き方というか、とにかく彼女を包んでいる雰囲気だ。もちろん、現実にそんな女性は存在しないと思う。フィクションとして好きだといっているのですよ、もちろん。

「未練通り」から見上げた空が「秋の空」であるという感覚を持った中ちゃんに、ちょっとばかり感心している。

 大いに感心しないのは、少し悔しいからだ……(笑)。