登場人物
豊臣秀頼(映像出演) 永田崇人
片倉重長・ト書き 安西慎太郎
穴山小助・ト書き2 中村龍介
ト書き『花のようなる秀頼様を 鬼のようなる真田が連れて 退きも退いたり鹿児島へ』・・・大坂夏の陣が終わった西の町に、ある日、どこからともなく、誰からとも知れぬ『わらべ唄』が聞こえてきた。かつてあったあの城と、そこに暮らした悲運の人を思い、人々はこの歌を口ずさむ。『花のようなる秀頼様を 鬼のようなる真田が連れて 退きも退いたり鹿児島へ』
あの日、燃え落ちた大阪城。母、淀殿と共にあの人も命を絶ったのだろうか
小助 『秀頼さまのこと』
ト書き 秀頼を見送った小助は、再び山道を行く
小助 厄介な子守りだったぜ。さて目指すは・・・
ト書き と、そこへ!偶然!たまたま!片倉重長が現れた。根っからの忍である小助は、とっさに身を隠す
小助 あいつは・・・
重長 小助さん?・・・ですよね。どこにいますか?ちょっと目では追いきれなかったんですけど、その恰好、懐かしい
小助 どうしてお前こんなところに。仙台に戻ったはずだろ?
重長 九度山の帰りです
小助 なに?
重長 よかった。生きてたんですね!小助さんが生きてると知ったら、みんな喜ぶだろうなぁ
小助 死に花を咲かせるつもりが、幸村に望みを託されてこのザマだ。届け物を任されてな。・・・あ、犬だ。若い犬と旅をしてた
重長 子犬?
小助 最初はしょぼくれてるし、ひねくれてるしで全く懐く素振りもない奴だったが、泣き疲れてからは少しずつ心をひらいてくれた
重長 子犬が
小助 ああ。奴も責任重大だったから、どこの者ともわからぬ俺との旅は、苦労が多かったろうさ
重長 (尊敬)スローライフを極めると、子犬とも心が通じるんですね。 それで、あの・・・
小助 俺も九度山へ向かおうとしていたんだ。残された、勇士たちの女房子供に戦の顛末を伝えるためにさ。けどもうお前が行ったんなら、その必要もないか
重長 小助さん、あの実は・・・
小助 じゃあな。もう会う事もないだろうさ
重長 あのですね、俺、結婚しまして
小助 は?
重長 えへへー
小助 あ・・・そうか、めでたいな。じゃあ
重長 それで奥さんが、実は
小助 平和なとこに戻れてよかったな。じゃあ
重長 幸村さんの娘さんをいただきました!
小助 ・・・・・・
重長 どさくさに紛れ、戦の終わりに仙台へ逃がしたんです。あそこにいると徳川に追われるでしょうしね
小助 バレてないのか?
重長 一度見かけられて、絶体絶命のピンチもあったんですけど、「他人の空似です!」と、断言したら納得してくれました
小助 絶対納得してないぞそれ
重長 言い切ったもん勝ちです
小助 そうか。あの子は無事なんだ・・・
重長 だから二人で九度山へ。久々に女友達とゆっくりお喋りがしたいそうで、俺は先に帰っててって言われちゃって。だからこうして一人で・・・
小助 (遮るように頭をさげる)!!
重長 え、どうしたんですか小助さん
小助 (まだ頭をさげている)
重長 なんですか、やめて下さいよ!
小助 ありがとう
重長 えぇ(戸惑い)?
小助 ありがとう。幸村の血は、滅んでしまったと思っていた。俺たちがふがいないばかりに、あいつの夢も、未来も、あの瞬間に終わらせてしまったんだと、終わらせるしかないと幸村に決断させてしまった、そんな己の力のなさが情けなくて、満月の夜を迎えるたびに皆と共になぜいけなかったか、この運命を呪うばかりで
重長 小助さん
小助 でも、そうじゃなかったんだな
重長 はい
小助 そうか。生きてるのか・・・
重長 (にこにこと)
小助 (重長の視線に気づき)なんだよ?
重長 きっとその子犬も、連れていってくれる人が小助さんで良かったと思ってますよ。まぁ最初はね、いかついし、なんか怖い人なのかなぁって思いますけど
小助 んぁ!?
重長 でもそうじゃないって、すぐに分かりますもん。子犬、新しい人生を歩き始めてるといいですね。俺、あん時は全然想像できなかったけど、あの人は背負うものが大きすぎるもんな
小助 犬の話だぞ?
重長 そうですね。(明るく)誰かを運んだなんて話は聞いていません!あの戦は、あれで終わったんです
小助 政宗は納得してるのか?
重長 はい。・・・いや、どうだろうな。あの人はいつでも天下を狙ってるからなぁ
小助 (失笑)
重長 誤解のないように言っておきますと、政宗様の天下っていうのは力づくで奪い取るものじゃないんですよ。そういう争いとか、血を流すことをやめてみませんか的な天下なんです
小助 的な
重長 的な
小助 その天下、九度山と似てたかもな
重長 だから政宗様は幸村さんと手を組みたかった
小助 でも幸村は豊臣を裏切る男じゃなかった
重長 俺、前に幸村さんから「武士ではない」って言われたんです。命をかける相手がいない、ぬるい生き方を指摘されて。確かになーって思って、ほんとへこんだんスけど、俺は結局、幸村さんの言う「武士」にはなれないみたいです
小助 刀さしてんのに?
重長 これ政宗様の受け売りなんすけど。図太く長生きしたいなって
小助 じゃあこの話はここまでだ
重長 待って下さい、この話には先があります。俺、やっぱりみんなが散っていった事、悲しいんです。俺にはできない生き様だなって思うけ
ど、生きててほしかったんです。みんな。誰もいなくなってほしくなかった。だから、俺は守る武士になります。誰も血を流さない天下を作るための刀を持ちます。それを今、真っ先に、先頭に突っ込んでってるのが政宗様なんです。だから俺は仙台藩に戻りました。あの人に命をかけられるかは、今でもわかりません。なんちゃってーとか言って笑われてる人だけど、俺の人生、あの人と目指すところは同じだから、俺もなんちゃってーとか言って、天下目指します
小助 笑われても
重長 まぁ、あんまりふざけた感じで馬鹿にされたら、キレる時もあるかもしれないけど・・・
小助 作ってくれよ、そんな天下
重長 はい! 見ててください、バシッとね、作ってみせますから。だから小助さん、楽しみに待っててくださいね!
小助 俺が?
重長 幸村さんから託されたことが全部終わっても、死なないで下さい。・・・あとを追うつもりだったでしょ?
小助 参ったな
重長 (明るくふざけて)図太く長生き!
小助 ほんと、まさかここでお前に出会うとはな
重長 あ、小助さん。俺、奥さんの女子会にこっそり紛れ込んでもいいと思いますか?それとも男らしく一人で仙台に戻るべきですかね?
小助 知らねえよ
重長 無関心って思われるのも寂しいし。どっちが正解ですかね?ねぇ、小助さん。どっちだと思いますか?
ト書2 重長による「どっちが正解ですか?」の問答はしばらく続いた。小助は、心底どうでもいいと思ったが、こんな男に嫁いだ幸村の娘は、きっとこれから幸せな人生を歩むのだろうと安堵もした。そしていつの日か、平和であることが当然な日々が訪れ、その時に重長を思い出すことを願った
重長 腹が立ったって、傷ついたって、構うもんか。その先を見据えて笑ってやる。嫌な奴らも全部まとめて平和にしてやる。秀頼さんも、ひっくるめてさ
ト書2 九州に渡った秀頼は、名を改めて新しい人生を歩む。悔いなく生きるべき道を探しだせたのは、誰のおかげか、皆のおかげか
重長 『秀頼さまのこと』おしまい
2人一礼