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地域創生ファンドへ!LDKプロジェクトの挑戦~TV・メディアの裏側を描く地域活性のリアルストーリー~

 2014年5月にオープンした名古屋の「LDK覚王山~まちのツリーハウス~」。中小規模の地域型商業施設がニュービジネスとして取り上げられる不動産活用術とタウンマーケティング。そこには10年に渡る経営者の発想の原点と、さまざまな不動産のプロが関わる研究事例でもある。

 私は創業80年、元・旅館業に始まる不動産会社の三代目です。私は父から受け継いだ会社のほかに現在2つの会社を経営しており、主に不動産の物件再生や事業創出に力を注いでいる華の30代です。しかし、私には悲しい過去も多く、受験失敗、事業売却、就職失敗、投資詐欺と、挑戦したからこそ待ち受ける苦難に、自分の信念がほんとうに打ち崩されるようなことがたくさんありました。

 特に、不動産に関して言えば、祖父から受け継いだ土地に対して、様々な業者から「売った方がいいよ」、「売れば楽になる」と不動産の売却を迫られ、周りからは「お金持ちで苦労知らずだから私たちとは違う」と誰からも共感を得られず、誰も信用できない環境下の中で育ちました。だから私は、私の元に来る不動産オーナーさんに対して、私は「あなたの土地は絶対に売らないでください、一緒に勉強しましょう」と言います。私はコンサルティングをしませんし、そんなお金を頂くくらいならば自分で稼ぐという強い意志の元で仕事をしています。



不動産について、この「LDK覚王山」の建物は、私が初めて金融機関の融資を受けて購入したものでした。




 私が20代の頃は、東京の投資銀行に勤めて日本中の不動産を資産管理したり、評価したり、売買しました。今から8年前にリーマンショックという金融不安によるバブル崩壊で、日本中の不動産が投げ売られる時代がありまして、この「LDK覚王山」がある建物もその捨てられた物件の一つでした。不動産ファンドが保有していたこの物件が債権回収機構という会社に流れたのち、ろくな管理がなされずに、水漏れ、壁の亀裂、設備不良、その他いろんな問題があった中で、5年前にこの物件を購入させて頂きました。


 とはいえ、何でも私の好きなように不動産経営できるわけではなく、この物件を担保に融資した銀行関係者の意思、建物所有会社の意思、各店舗経営者の意思があり、家賃を自由に設定することはできません。ですので、彼らとコミュニケーションをする上で必要な不動産の基礎知識を学び、一つ一つ問題点を解決するために努力することに決めました。


 ビジネスは明解であり、非情であります。私が立てた不動産の収支計画を超える成果を出せば何も文句を言わず、失敗したら叱責追求を受け、悪くすればすべての資産取り上げ、お取り潰しとなります。だからこそ、お金のことだけは責任を持って整理し、判断することが、経営者としての使命と受け止めています。


まずは、この物件をなぜ購入したのか?



 それは私の生まれ故郷である覚王山であったからというのが縁の始まりです。故郷の再生は、一人一人の不動産オーナーに課せられた使命と受け止めています。



 その昔、私の祖父が名古屋の戦後復興期に名古屋地下街の開発や名古屋の発展に一生懸命力を注いできた歴史があることを親戚や祖父の知人から聞いたことがあります。今でも私が知らない多くの祖父の友人や仕事関係者から感謝されることがあります。そう、長年かけて築き上げた信用を大切にし、土地の歴史を受け継ぐ伝承人として、不動産オーナーは最後の最後まで土地に執着する生き物なのです。お金の問題はありません。奮闘の果てであれ、不動産を売ってしまえば、「あぁ、あの人はついに戦いに負けたのか」と、その地域、その街にいられなくなってしまうほどプライドの高き地主という職業なのです。


こんな考えはみなさんには無関係と思われるでしょうか?


 実は今、不動産オーナーは、日本人の大半がその立場にあたります。あなたの親が持っている実家、あなたが買ったマンションの一室、別荘の土地、すべての方に相続税がかかる時代となり、不動産を持つか捨てるかをいずれ選択しなければなりません。みんな不動産のことを勉強しなければならない時代が来たのです。


 そこで、「ノーブレス・オブリージュ(nobles oblige」という言葉をみなさんはご存知でしょうか?19世紀のイギリスの女優で著作家であるファニー・ケンブルが手紙の中で「貴族が義務を負うのならば、王族はより多くの義務を負わなければならない」と書いたのが、この言葉のはじまりとされている。つまり、貴族に自発的な無私の行動を促す明文化されない社会の心理であり、社会の模範となるように振る舞うべきだという社会的責任に関して用いられる。現代ではCSRとしての考えに近い。私は、「地主としてのノーブレス・オブリージュは何か?」について考え、多くの先人・先輩より学び、さらなる地域の発展と、歴史の承継にどうかかわっていくかを追求している一人でもあります。


 私たち不動産オーナーはそのことを深く理解した上で、もしかしたら、その土地を手放すときが来るかもしれません。誰か使命を受け継いでくれる人に土地をお渡しするときが来るかもしれません。それでも、最後まで、その地域のこと、そこに住む人たちのために何か協力できることがないかと考え、同じように苦しむ不動産オーナーさんがいたら助けあう精神を大切にしたいと話し合う場として昨年、不動産オーナーのためのビジネススクールを立ち上げました。このLDK覚王山の実現に際し、このビジネススクールの存在は欠かせません。


 周りからはちょっと変わった不動産オーナーと言われていますが、そんなに地域のことを考えて利益も出していける事業が不思議なのでしょうか?ボランティアやNPOにしてみれば、利益を出すだけで地域に還元していないと言い切れるのでしょうか?私はお金の仕組みについて、いち金融学専攻の人間として真正面から追求してみたいのです。


次は私の不動産投資の考え方と街づくりに必要な地域創生ファンドについてお話します。


不動産オーナー経営学院REIBS

http://reibs.org/






生まれてきてくれてありがとう。

幸志郎 2013年1月26日生まれ


 はじめまして、「LDKプロジェクトの挑戦」の筆者のANDYです。現在は「LDK覚王山~まちのツリーハウス~」のプロデュースをはじめ、その他に不動産総合事業、学校業、IT業を経営する一児のパパです。私の志は、不動産オーナーとして、街づくりを通じて様々な社会課題を解決する街づくりプロフェッショナルとなり、やり抜く意志を大切にしています。


このブログでは、こんな方に読んでほしいと思いまして、これからストーリーを進めて参ります。


〇日本で不動産を所有している不動産オーナーの方

〇街づくり活性化に興味がある、具体的に取り組んでいる方

〇子育て支援や子育てコミュニティを発展させたいと考えている方

〇社会問題(託児問題や空家問題など)に取り組む社会起業家や行政関係の方

〇建築、不動産、金融に関わるお仕事をしている方


  


 私は1981年生まれの34歳で、この「LDK覚王山」がある愛知県名古屋市で生まれ育ちました。この覚王山という場所は名古屋駅から電車で20分ほどのところにあり、閑静な住宅街や昔ながらの商店街が残る歴史と文化の街で、この「LDK覚王山」は覚王山駅から徒歩6分くらいのところにある住宅街にあります。


 近くにある小学校は私の母校でもあり、この「LDK覚王山」に来てくれる近所の方々やこどもたちの多くは、私が昔お世話になった方々もいらっしゃるし、その子供さんや親戚などが親になって子供を産み、その故郷に戻ってきている方々もいらっしゃいます。もちろん、覚王山という文教地区としても有名なこの地区に引っ越してきた新しい居住者の方々もいらっしゃいます。


 そんな覚王山の住宅街に2014年5月末にオープンしたのが「LDK覚王山」である。「家族みんなが集まれる場所」がコンセプトであり、地域活性型商業施設として「場づくりシェア」をサービスとしています。いわゆる、シェアオフィス、シェアハウスのような、事務所や住居をベースとしたシェアに比べ、シェアの商業施設というのもあってはいいのではないかと思うのだが、この難易度の高さは、多くの街づくりを経験した人でさえも、ロードマップを作るのが難しいと言われている。


なぜ商業施設でのシェアは難しいのか?


それは「用途が多岐にわたるから」である。


 つまり、住居なら「住むという目的」であり、オフィスならば「仕事をするという目的」であるのに対して、商業は「物を売る、飲食する、展示する、休憩する、サービスを提供するなどの多目的」である。またその家賃を払う上での対価は、住宅やオフィスは相場家賃で決まるのに対して、店舗は販売による利益に比例した家賃なので、ある程度の相場家賃はあるものの、結論としては「集客性」が求められます。最近ではシェアルームやシェアオフィスの一角で、空いた場所を飲食スペースや展示物の販売などサービスを提供する付加価値サービスが流行っていますが、実際に販売となると、シェアルームの入居者やシェアオフィスの会員向けといった少ない顧客を対象としたサービスでは売り上げが立ちづらく、文字通り、「やっていけない」という結果になります。



 

 
(LDK覚王山では、無料キッズルーム、ブックカフェ、デイサービス、ダンススタジオ、キッズ英会話などの施設が店舗として入っている)

 結果として、これまではイオンなどの総合モールや家具物流施設など大型開発に頼った商業施設が目立ち、その大型施設ができると周囲の地価が一気に跳ね上がり、住民が押し寄せるといいます。では、その大型施設とまではいかないまでも、商店街やエンターテイメント性の少ない日本の地域はいま、どんな状況でしょうか?


 そう、「高齢化と過疎化の問題」です。よく、高齢化や過疎化の問題に対して、お年寄りが多く集まるのだから、老人ホームや高齢施設などをつくり、若者を呼び込んで雇用を生もうと取り組む行政や民間企業があるのですが、ちょっと若い人の意見も聞いてください。


 子育て環境もない、遊ぶ場所もない、買い物に行く場所や、ゆっくり休むカフェもない。あるのは老人ホームだけでは、雇用は生むけど、人間としての豊かな生活は営めません。決して、物質的な豊かさを求めているわけではなく、人間が生活する上でのサービスがなければ心が病んでしまいます。ですから、私が不動産のプロであり、自ら一児の親として、LDK覚王山でやってきたことと、これから世の中に提案したいことが以下の3つです。


ポイント①空家対策

LDK覚王山は、2年近く空いていた事務所を店舗に変更し、空室を埋めたこと。付随して家賃が上がり、マンションの家賃10k%~15%上昇、店舗に至っては坪単価1万円以上。


ポイント②地域活性化

LDK覚王山は、子供からお年寄りまで三世代で楽しめる場所として、「健康」「まなび」「癒し」をテーマとしていること。様々なイベントや地域のコミュニティ形成の中心地としての役割を担っている。

ポイント③社会課題を解決すること

LDK覚王山は、無料キッズルームを併設しており、「子育てをしながら〇〇できる」という利便性があること。


 私と妻が実際に名古屋で子育てをしながら仕事をする上で気が付いたことがあります。多くの報道やメディアが現在取り上げている「託児所不足問題」についてです。実は名古屋市に託児所はたくさんあるのですが、数の問題ではなく、その利便性、施設充実度、周辺環境に問題があると私たちは考えております。つまり、託児所がが、通行規制の多い商店街の隅にあって車を止める場所がなかったり、スーパー、医療機関、スクールなどの生活圏から離れていたりして、「移動するのが非常に困難」なのです。私と妻は実は2年前まで東京に住んでおりましたので、これらの育児は一日のうち3時間もあればすべて終わるのに、名古屋に来たら一日がかりで子育てになってしまったのです。


この「LDK覚王山」ができるまでには、私の不動産オーナーとしての志がありますので、次にご紹介させていただきます。

TV・メディアの裏側を描く地域活性のリアルストーリー
~LDKプロジェクトの挑戦~


CBCテレビ ニュースでの紹介の一コマ


 


~コラム目次~


1、 はじめに自己紹介
2、 不動産オーナーの使命とは?

3、プロが考えるこれからの不動産投資(街づくり)とは?
4、 家賃無料化時代へ~銀行との交渉~

5、 明日から客はいない・・「リノベーションの現実」~全国に広がる空家問題と街おこし~
6、 現在進行形のプロジェクトレポートの必要性 2010年~2015年まで
7、 ソフトリノベーションとは?
8、 六本木ヒルズをモデルとするタウンマネジメントの研究(不動産オーナー経営学院の創立)
9、 社会起業家の重要性



~時系列の目次~

2010年(29歳)
    2010年11月に物件の取得


2011年(30歳)
    名駅四丁目酒場「メイヨン」オープン(2012年4月~2011年より物件募集)
    原状回復の間違った発想とマーケティング調査の実務
    柳橋市場の「商店街再生キーワード」はシャッターを無理やり開けないこと


2012年(31歳)
    LDK覚王山2Fのテナント退去
    空室募集しても借り手がいない地方の現実
    家賃を下げればテナントは決まるだろうという不動産仲介業者の発想
    家賃0円でもニーズがない地方の現実(人口減少と空洞化)


2013年(32歳)
    2013年6月LDKプロジェクトの企画開始
    不動産オーナー経営学院1期スタート
    地域型タウンマネジメントの企画開始

※200坪の改修プロジェクトで、予算がかかる、期間も人員も不足している中で何度も打ち合わせを重ねる日々。


2014年(33歳)
    LDK覚王山の工事着工
    2014年5月オープン「三世代交流型商業施設と場づくりシェア」
    華やかにオープン!
    オープンの次週とリノベーションの現実
    オーナーの意思がなければ数年と維持できない
    無料キッズルーム、ブックカフェとの連動
    覚王山街づくり会議
    取材が殺到。しかし次の日は・・・

※しかしながら、お客さんとの交流は一朝一夕では達成できず、店舗トラブル、集客問題、プロジェクトの危機など何度もありました。


2015年(34歳)
    TVでの反響
    不動産管理の改革
    2015年5月1周年記念ウィークに向けて
    マンション、店舗、様々な付加価値と家賃向上
    大看板工事に取り掛かる!
    2年目からの計画

    クラウドファンディングの実施
    不動産オーナー経営学院の東京・名古屋・大阪進出

※街の様々な団体がイベント主催者として名乗りをあげてくれ、協賛会社やメディアの取材も再度受け始める。そこで次の展開は・・・


~月刊不動産2015年1月号掲載~







~時系列目次~